かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発を詠む(16)――朝日歌壇・俳壇から(2014年8月18日~9月15日)

2014年09月15日 | 鑑賞

朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」、「原爆」に関連して詠まれたものを抜き書きした。

 

原爆に逝きし父の忌めぐり来も墓参叶わずホームに病む身
             (徳島市)磯野富香  (8/25 馬場あき子選)

ほとんどが卒寿を越えた証言者被爆六十九年の今
             (長野市)祢津信子  (8/25 馬場あき子選)

整然と一万千七百五十の椅子並ぶ平和記念公園雨降り続く
             (札幌市)藤林正則  (8/25 佐佐木幸綱選)

乗り組みし人みな鬼籍に入りてなおエノラゲイの名消ゆる事なし
             (岐阜県)野原武  (8/25 野公彦選)

広島に育ちて毎夏ヒロシマを学びて思う「知らぬということ」
             (広島県府中市)内海恒子  (9/1 佐佐木幸綱選)

黙祷を捧げて水を飲むこれは何万人が飲めなかった水
             (大阪市)安良田梨湖  (9/1 佐佐木幸綱、永田和宏、馬場あき子選

縦じわと横じわ深く交差させヒロシマに座すケネディ大使
             (近江八幡市)寺下吉則  (9/1永田和宏選)

サッカーのゴールネットの真うしろに青き巨鯨のごとき除染土
             (柏市)秋葉徳雄  (9/1 野公彦選)

体内に残留放射能持つ不安おしこめて生きし六十九年
             (アメリカ)大竹幾久子  (9/8永田和宏、馬場あき子選)

数万が見上げて死にし原爆を上から見た人バンカーク氏逝く
             (アメリカ)大竹幾久子  (9/15永田和宏選)

広島で学徒兵なりし僧がつく鎮魂の鐘染む八月六日
             (津市)田中周治  (9/15馬場あき子選)

原発の廃炉は決めずわが町の避難受け入れ先を公示す
             (島田市)水辺あお  (9/15 佐佐木幸綱、野公彦選)

九条と空気は同じ汚されてはじめて気づくいかに大事かと
             (東京都)無京水彦  (9/15 野公彦選)

馴らされて馴れてしまって線量も気づけば忘れかけてるふだん
             (福島市)美原凍子  (9/15 野公彦選)

 

戦争のせめて歯止めに原爆忌
             (弘前市)三浦博信  (8/18 長谷川櫂選)

太陽の真下に地球ヒロシマ忌
             (八王子市)額田浩文  (8/25 金子兜太選)

人類は発明しすぎ原爆忌
             (立川市)松尾軍治  (8/25 大串章選)

人間の頭上に原爆落とした日
             (秩父市)浅賀信太郎  (9/1 金子兜太選)

フクシマはカタカナのまま野分くる
             (高山市)直井照男  (9/8 金子兜太選)

玄関の慰め水や広島忌
             (東京都)吉村翡翠  (9/15 長谷川櫂選)

蓑虫も鳴き広島を悼みおり
             (三郷市)岡崎正宏  (9/15 大串章選)