朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」、「原爆」に関連して詠まれたものを抜き書きした。
最終はいずこにか中間貯蔵施設ちゅうかんという果てなき長さ
(福島市)美原凍子 (2/16 馬場あき子、高野公彦選)
ふ・る・さ・と・とつぶやいてみるふるさとのまんなかうれしまんなかかなし
(福島市)美原凍子 (2/23 永田和宏選)
風評に松川浦の小女子(こうなご)の届かずなりて四度目の春
(下野市)若島安子 (3/2 高野公彦選)
厳冬の空は真蒼(まさお)く凍てついて原爆ドームは夏の日のまま
(安芸高田市)安芸深史 (3/2 佐佐木幸綱選)
福島も日本固有の領土です戻れない人十二万人
(半田市)石橋美津子 (3/2 佐佐木幸綱選)
海山の幸が集まるわが町の南に巣籠もる原発一基
(島田市)水辺あお (3/9 佐佐木幸綱、高野公彦選)
朽ちてなお放射続ける3号機ひしゃげた鉄骨鳴る線量計
(いわき市)池田実 (3/16 馬場あき子選)
ダイオードの赤き光闇にあり校庭のベクレル伝えおり
(いわき市)大平好一 (3/16 馬場あき子選)
3・11廃炉となるか一〇〇年後我ら作業員は働いているか
(いわき市)池田実 (3/23 佐佐木幸綱選)
人の知の及ばぬ深き闇ならむ燃料棒の融け沈みたる炉は
(網走市)寺澤和彦 (3/23 佐佐木幸綱選)
山里に幅広き道造られぬ汚染土運ぶための道なり
(福島市)美原凍子 (3/23 馬場あき子選)
セシウムを谷津田に残す春の雨
(成田市)神郡一成 (2/23 金子兜太選)
老ひとり被爆の土を耕せり
(川口市)青柳悠 (3/16 金子兜太選)
被爆地の空高々と鶴帰る
(大村市)小谷一夫 (3/23 大串章選)
朝日俳壇・花壇欄コラム『うたをよむ』(3/2付け)
俵万智「原発事故と日常」から抜粋
「原発事故から4年。出来事は歴史上の「点」ではなく、そこを出発とした新たな日常を育む。いずれも、ここ半年以内に出版された歌集から、歌をひいてみる。
「甲状腺検査」だといふ五時間目「古典」の授業に五人公欠
本田一弘
………
蜂の巣に蜂の羽音せぬ真昼 除染といふは移染にすぎず
高野公彦
………
誰か生きて生きる限りは何年も冷やし続ける介護するように
佐佐木幸綱
原子炉内で熔け落ちた炉心を、冷却する作業が、事故以来続けられている。それはもう永遠に続く介護のようなものだが、その介護が終る日に果たして人類は存在するのだろうか。………」