かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発を詠む(20)――朝日歌壇・俳壇から(2015年2月16日~3月23日)

2015年03月23日 | 鑑賞

朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」、「原爆」に関連して詠まれたものを抜き書きした。

 

最終はいずこにか中間貯蔵施設ちゅうかんという果てなき長さ
             (福島市)美原凍子  (2/16 馬場あき子、高野公彦選)

ふ・る・さ・と・とつぶやいてみるふるさとのまんなかうれしまんなかかな
             (福島市)美原凍子  (2/23 永田和宏選)

風評に松川浦の小女子(こうなご)の届かずなりて四度目の春
             (下野市)若島安子  (3/2 高野公彦選)

厳冬の空は真蒼(まさお)く凍てついて原爆ドームは夏の日のまま
             (安芸高田市)安芸深史  (3/2 佐佐木幸綱選)

福島も日本固有の領土です戻れない人十二万人
             (半田市)石橋美津子  (3/2 佐佐木幸綱選)

海山の幸が集まるわが町の南に巣籠もる原発一基
             (島田市)水辺あお  (3/9 佐佐木幸綱、高野公彦選)

朽ちてなお放射続ける3号機ひしゃげた鉄骨鳴る線量計
             (いわき市)池田実  (3/16 馬場あき子選)

ダイオードの赤き光闇にあり校庭のベクレル伝えおり
             (いわき市)大平好一  (3/16 馬場あき子選)

3・11廃炉となるか一〇〇年後我ら作業員は働いているか
             (いわき市)池田実  (3/23 佐佐木幸綱選)

人の知の及ばぬ深き闇ならむ燃料棒の融け沈みたる炉は
             (網走市)寺澤和彦  (3/23 佐佐木幸綱選)

山里に幅広き道造られぬ汚染土運ぶための道なり
             (福島市)美原凍子  (3/23 馬場あき子選)

 

セシウムを谷津田に残す春の雨
             (成田市)神郡一成  (2/23 金子兜太選)

老ひとり被爆の土を耕せり
             (川口市)青柳悠  (3/16 金子兜太選)

被爆地の空高々と鶴帰る
             (大村市)小谷一夫  (3/23 大串章選)

 


朝日俳壇・花壇欄コラム『うたをよむ』(3/2付け)
  俵万智「原発事故と日常」から抜粋

「原発事故から4年。出来事は歴史上の「点」ではなく、そこを出発とした新たな日常を育む。いずれも、ここ半年以内に出版された歌集から、歌をひいてみる。

「甲状腺検査」だといふ五時間目「古典」の授業に五人公欠
                           本田一弘
………

蜂の巣に蜂の羽音せぬ真昼 除染といふは移染にすぎず
                           高野公彦
………

誰か生きて生きる限りは何年も冷やし続ける介護するように
                           佐佐木幸綱

 原子炉内で熔け落ちた炉心を、冷却する作業が、事故以来続けられている。それはもう永遠に続く介護のようなものだが、その介護が終る日に果たして人類は存在するのだろうか。………」