かわたれどきの頁繰り

読書の時間はたいてい明け方の3時から6時頃。読んだ本の印象メモ、展覧会の記憶、など。

原発を詠む(15)――朝日歌壇・俳壇から(2014年6月30日~8月10日)

2014年08月10日 | 鑑賞

朝日新聞への投稿短歌・俳句で「原発」に関連して詠まれたものを抜き書きした。

 

原発に囲まれて逃げ道なき小浜UPZとなるも方策はなし
             (小浜市)田所芳子  (6/30 高野公彦選

原発の映らぬ日々なりテレビには民を守ると総理は映る
             (本宮市)廣川秋男  (7/6 佐佐木幸綱選)

清志郎生きていたならどう叫ぶ原発輸出解釈改憲
             (青森県)中村範彦  (7/14 佐佐木幸綱選)

原発のせいとは誰も言わないで目立たぬように住む人は減る
             (浜松市)桑原元義  (7/14 佐佐木幸綱選)

少年の「僕は大人になれますか?」原発事故のあの時の声
             (横浜市)田口二千陸  (7/21 馬場あき子選)

病院も学校もスーパーも2キロ圏 原子力空母街に食い込む
             (横須賀市)梅田悦子  (7/21 高野公彦選)

原発も戦争(いくさ)も許すこの国を知らで園児ら七夕飾る
             (大分市)児玉直  (7/28 高野公彦選)

線量を忘れかけてた三年目除染作業の通知が届く
             (福島市)稲村忠衛  (8/4 永田和宏選)

大き根を宙に突き上げ炭になりし国泰寺の楠悼む原爆忌
             (水戸市)中原千絵子  (8/10 馬場あき子選)

どっかーんと爆発をしたそのあとじゃ遅いのだけど再稼働する
             (小平市)萩原慎一郎  (8/10 佐佐木幸綱選)

 

廃炉まで怯えながらの端居かな
             (いわき市)中田昇  (7/14 金子兜太選)

原発と基地とまたぞろ原発忌
             (福津市)松崎佐  (8/10 金子兜太選)

原発を睨んで立つは原爆忌
             (青梅市)津田洋行  (8/10 長谷川櫂選)

戦争へまた戦争へ原爆忌
             (前橋市)吉江充慶  (8/10 長谷川櫂選)

フクシマを忘るる国に原爆忌
             (いわき市)中田昇  (8/10 長谷川櫂選)

 

【註1】
UPZ : 緊急時防護措置準備区域(Urgent Protective action planning Zone, UPZ)。国際原子力機関(IAEA)が概念を示し、原子力施設からおおむね半径30kmの範囲で防災対策を重点的に行う区域のこと。東電福島第1原発事故で明らかになったように、地形、風向きで放射能汚染分布は著しく異方的になるうえ、被曝線量限度をどの程度に定めるかによって避難区域の範囲は大きく異なるため、UPZはごく恣意的(政治的)な概念に過ぎない。

【註2】
このブログの抜き書きのシリーズでは、これまで原爆に関する歌、句を除いてきたが、フクシマから4年目に入った現在では原爆と原発事故による放射能被爆が私たち日本人にもたらした(これからもたらすであろう)不幸と苦痛はまったく同じであることから、原爆に関するものも含めることにした。



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