歌人・河野裕子さんの遺歌集「蝉声」を読んだ。
歌集の「あとがき」で、夫君・永田和宏氏が、「これ以降の歌集はもう決して出ることはないのだということに、あらためて無念の思いが強い」と書いている。
かねてより密かな愛読者だった私としても、とても残念でならない。
亡くなったのは平成22年8月12日。享年64歳であった。
昭和47年(26歳)のころの歌に、
「青林檎与へしことを唯一の
積極として別れ来にけり」
があった。
なんと初々しいことであろうか。 この頃、夫君永田氏と結婚した。
「明日になれば切られてしまふこの胸を
覚えておかむ湯にうつ伏せり」
乳癌を切除するにあたっての慟哭であったろうか。
永田氏の「あとがき」によれば、最後の頃は鉛筆も持てなかったようだ。
次の歌は、夫君による口述筆記(平成22年8月11日)とのこと。
「手をのべてあなたとあなたに触れたきに
息が足りないこの世の息が」
ご冥福をお祈りします。
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