水掻きの疵痛々し残る鴨 ひよどり 一平
(みずかきのきずいたいたしのこるかも)
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鴨が一羽、陸に上がって休んでいた。傍らの池にはもう一羽の鴨。
私が近寄って行った。休んでいた鴨が池の面へ動いた。足元が不自由そうだった。
水面に浮かんでいた他の一羽の鴨が、険しく鳴きながら陸に向かって泳いできた。
陸の上の鴨が、もそもそと動いた。「あれ?」、右脚の水掻きに疵が見えた。不自由な水掻きを引きずって、陸の鴨が水面へ移動した。
その一部始終を私は眺めていた。一瞬のことだったので、水掻きの疵を撮れなかったが、まさしく「残る鴨」を見ることができた。
どのような関係の二羽なのか知らない。一羽の鴨が他の一羽をいたわりながら、池の中央へと泳ぎ去った。
ほっこりと温かいものが私の胸に残った。