正義漢と言えば聞こえはいいが、私の場合は怒りっぽいだけのことかもしれない。
つまり、沸点が低いのだ。
子供の頃からの性格で、母親もかなり心配してくれたようだった。
「怒りたくなったら、親指の爪を舐めるんだよ」、と、これは当時の母親の弁。
腹が立ったら親指の爪を舐め、爪が乾いてからものを言えという内容だった。
爪が乾くまでの時間を置けば、きっと冷静になるはず。
母親の知恵だったのか、誰かの知恵だったのか?確認したことはなかった。
せっかくの知恵だったのだが、私は一度も実行していない。だから効用は未確認。
80歳を過ぎても爪を舐めずに怒ったり、発言をしたりしている。
その都度、残るのは深い自己嫌悪。
今日もまた繰り返してしまった。
「あーあ、あんなこと、言わなきゃよかったなァ」
こんな日に限って、畑の唐辛子が赤々と眼に飛びこんで来る。意地悪な唐辛子。
年老いたからといって、辛い唐辛子は辛い。甘くなるはずはない。
諍いて戻る道の辺とうがらし ひよどり 一平
(いさかいてもどるみちのべとうがらし)