花なづな少年の日のあれやこれ ひよどり 一平
(はななずなしょうねんのひのあれやこれ)
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少年と呼ばれたのは遥かな昔。
色々なことがあった。
小学校に入学する前、隣のみっこちゃんが引っ越して行った。淋しかったなぁ。
しかし一番は、やはり戦争のことか。
真夜中にアメリカ海軍の艦砲射撃に遭い、土砂降りの中、山のトンネルへ逃げた。
その幾日か後の深夜、今度は爆撃機の空襲に遭って、沢山の家が焼けてしまった。
戦争に敗けたのは、その年の夏休みだった。
壊れかけたラジオから流れた天皇陛下の玉音放送。「堪え難きを耐え、忍び難きを忍び・・・」は、その時に聞いた言葉だ。
二学期からは、教科書の所々を墨で塗りつぶして使った。変な気分だった。
戦争の思い出はいろいろあるが、少年にとって、さほど恐怖はなかった。
むしろ新型コロナウイルスのほうが恐ろしい。