「おもしろうてやがてかなしき鵜舟哉(かな)」は有名な芭蕉の句で、鵜飼いの終わったあとの動と静、華やかさと静寂のコントラストを見事に現していますが、たしかにその終わったあとの一抹の静寂感もまた鵜飼いの味わいといえます。 しかし、意外と知られていないのが鵜飼いが始まる前の様子です。現在の鵜飼は、鵜匠や鵜はもちろん主役なのですが、同時にそれを取り巻く観覧船を抜きにしては語れません。 漁をしながら下ってくる鵜飼舟を待ち受ける観覧船は、一定の場所からその鵜飼舟に寄り添うようにともに下り、観客は鵜が鮎を獲るたびに拍手を送り、あるいは歓声を上げ、それに励まされるように鵜たちは最後の見せ場、総がらみ(六艘の鵜船が舳先を揃えて漁をするフィナーレ)へと向かいます。 こうして鵜飼いは、鵜舟とそれを取り巻く観覧船とのシンフォニーのような共演として行われるのです。 ここに掲げる写真は、そうした観覧船の準備をする人たちの様子です。 午後4時を過ぎた頃、何十人かのスタッフたちは一斉に観覧船の船溜りへ姿を表します。そして船頭さんたちは自分の竿を持ち、船頭さんを所定の船へと運ぶ船に乗り込みます。 そのとき、竿は邪魔にならないようまっすぐに中天へと立てられ、まるでレガッタレースで勝者がその誇りをオールを立てて誇っているかのようです。こうして各船に着いた船頭さんたちはその船を観客の乗り場へと漕いできて接岸します。 しかしそれで作業が終わったわけではありません。さらに他のスタッフと共同で、観覧船の床からテーブルを掃除し、座布団など必要なものを搬入し、顧客たちが快適に鵜飼い見物ができるよう心配りの用意を進めるのです。 このあと、お客様お楽しみの料理などが運び込まれるのですがそれはまた。 ところで鵜飼も残すところあと20日ほどとなりました。 夏の盛りの鵜飼いもですが、秋の鵜飼いもまた一段と味わいの深いものです。 残されたチャンスに是非お越しください。 また、今年は間に合わなかった方も、来年にはぜひ「長良川の鵜飼」をその行楽スケヂュールにお加え下さい。 (裏方のスタッフたちのみなさんに感謝のホテパクちゃんでした)
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