今週は、この2冊。
無罪/死ぬときはひとりぼっち/
■無罪/ジョン・コラピトン 2016.8.13
ジョン・コラピトンの『無罪』を読みました。
何が無罪なのか、考えました。
ぼくには、クロエ・ドワイトがどのような女性なのか不思議な感じでした。
小悪魔か、それとも天然の子供のような性格なのか。
デズは、悪魔的な人間で、早晩地獄行きは間違いない。
このような事件は、実際にはその後、どのような処理が為されるのでしょうか。
「わたし、変わったのよ、デズ」
「あなただって変われる。ほんとうなんだから。遅すぎるってことはないのよ。ほかの人のいい面を見ることを学べばいいだけ。それから自分自身のいい面もね」
人生は必ず涙で終わるひどい悪ふざけだ。
『 無罪/ジョン・コラピトン/横山啓明訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
■死ぬときはひとりぼっち/レイ・ブラッドベリ 2016.8.13
少し昔(2005年10月)に出版された作品『死ぬときはひとりぼっち』を読みました。
すごく詩情豊かな作品でした。
表紙装幀の小窓に漂う雰囲気が、作中にも流れ込んでくるようです。
私のほかには、節々の軋む木製の大きな車体があり、一番前で制御器の真鍮のハンドルをがちゃがちゃと操って、ブレーキをゆるめたり、必要に応じて警笛を鳴らしたりしている運転手がいるだけだ。
文章の流れに乗れなくて、初め少々手こずりました。
読み進めば、登場人物が、生き生きと魅力的に描かれていて、朝起きたら、今日は誰を訪ねようかと楽しみになる人たちばかりです。
理髪師キャルの店に散髪に行って、家に帰るやいなや、妻に、「アンタ!なんであんな下手なキャルのとこなんかに行ったのよ、そんな頭して表を歩けないよ、バカ!」と言われるのが目に見えます。
ラティガンにしてもファニーにしても、つきあったら別れられない、忘れられない女性達です。
亡くなったら切なくて、夜も眠れない。
クラムリーは今夜も、古いタイプライターを前に目をつむっているだろうか、もう午前三時というのに。
そのときようやく気づいたのである。 ああ、初めてだ。 ファニーが自分の部屋で歌った。
私のために!
そこからは別れの歌が聞こえた。 真っ白な制服を着た若い海軍士官が、出港のとき、蝶々夫人に歌う歌だ。
ファニーは巨体をベランダに運び、そこから私を見下ろしていた。 ばら色の小さな唇は悲しげにほほえんでいた。 収穫月の満月のような丸い顔、その内部に捕らえられた若い娘。 ファニーの背中のうしろから流れ出る音楽は、私たちの友情と暫しの別れを歌い上げていた。
バックするだけ。 私は過去を操る女。 現在なんかどうなろうと知ったこっちゃないし、未来も勝手にしやがれ、よ。 私は未来になんか行かない。 行きたくもないし、無理に未来へ行かせようとする人間は憎むわ。 これぞ完璧な生活じゃない?
私とおんなじじゃない? 昔の有名人をお客に呼んで、イヤリングを外してやるなんて粋なこと、する気はないの?
『 死ぬときはひとりぼっち/レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹訳/文藝春秋 』
無罪/死ぬときはひとりぼっち/
■無罪/ジョン・コラピトン 2016.8.13
ジョン・コラピトンの『無罪』を読みました。
何が無罪なのか、考えました。
ぼくには、クロエ・ドワイトがどのような女性なのか不思議な感じでした。
小悪魔か、それとも天然の子供のような性格なのか。
デズは、悪魔的な人間で、早晩地獄行きは間違いない。
このような事件は、実際にはその後、どのような処理が為されるのでしょうか。
「わたし、変わったのよ、デズ」
「あなただって変われる。ほんとうなんだから。遅すぎるってことはないのよ。ほかの人のいい面を見ることを学べばいいだけ。それから自分自身のいい面もね」
人生は必ず涙で終わるひどい悪ふざけだ。
『 無罪/ジョン・コラピトン/横山啓明訳/ハヤカワ・ミステリ文庫 』
■死ぬときはひとりぼっち/レイ・ブラッドベリ 2016.8.13
少し昔(2005年10月)に出版された作品『死ぬときはひとりぼっち』を読みました。
すごく詩情豊かな作品でした。
表紙装幀の小窓に漂う雰囲気が、作中にも流れ込んでくるようです。
私のほかには、節々の軋む木製の大きな車体があり、一番前で制御器の真鍮のハンドルをがちゃがちゃと操って、ブレーキをゆるめたり、必要に応じて警笛を鳴らしたりしている運転手がいるだけだ。
文章の流れに乗れなくて、初め少々手こずりました。
読み進めば、登場人物が、生き生きと魅力的に描かれていて、朝起きたら、今日は誰を訪ねようかと楽しみになる人たちばかりです。
理髪師キャルの店に散髪に行って、家に帰るやいなや、妻に、「アンタ!なんであんな下手なキャルのとこなんかに行ったのよ、そんな頭して表を歩けないよ、バカ!」と言われるのが目に見えます。
ラティガンにしてもファニーにしても、つきあったら別れられない、忘れられない女性達です。
亡くなったら切なくて、夜も眠れない。
クラムリーは今夜も、古いタイプライターを前に目をつむっているだろうか、もう午前三時というのに。
そのときようやく気づいたのである。 ああ、初めてだ。 ファニーが自分の部屋で歌った。
私のために!
そこからは別れの歌が聞こえた。 真っ白な制服を着た若い海軍士官が、出港のとき、蝶々夫人に歌う歌だ。
ファニーは巨体をベランダに運び、そこから私を見下ろしていた。 ばら色の小さな唇は悲しげにほほえんでいた。 収穫月の満月のような丸い顔、その内部に捕らえられた若い娘。 ファニーの背中のうしろから流れ出る音楽は、私たちの友情と暫しの別れを歌い上げていた。
バックするだけ。 私は過去を操る女。 現在なんかどうなろうと知ったこっちゃないし、未来も勝手にしやがれ、よ。 私は未来になんか行かない。 行きたくもないし、無理に未来へ行かせようとする人間は憎むわ。 これぞ完璧な生活じゃない?
私とおんなじじゃない? 昔の有名人をお客に呼んで、イヤリングを外してやるなんて粋なこと、する気はないの?
『 死ぬときはひとりぼっち/レイ・ブラッドベリ/小笠原豊樹訳/文藝春秋 』