ゆめ未来     

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「シンパサイザー」  モグラの複雑な話でした

2017年11月20日 | もう一冊読んでみた
シンパサイザー/ヴィエト・タン・ウェン  2017.11.20

 一つ意見を述べさせて下さい。真実は、あるいはある程度の真実は、若いときの愚かさにこそ見いだされるのだ、ということです。

ヴィエト・タン・ウェンの 『シンパサイザー』 を読みました。
読み切るのには、大変な馬力が必要です。
ぼくは、エピソードの面白さに背中を押されて読み進めることが出来ました。
本書を手に取られたならば、読むのにかなり馬力が要りそうだと感じられるはずです。

ぼくには難しい本でした。
こんな時は、「訳者あとがき」の知識を借りるに限ります。

 個人としてのヴェトナム人に目を向けた作品、ヴェトナム人の心情まで深く踏み込んだ作品は非常に少なかったと言える。
 本書の作者、ヴェトナム系アメリカ人のヴィエト・タン・ウェンは、少年時代、このことに居心地の悪い思いをしたという。

 こうした物語から浮かび上がってくるのは、言うまでもなくヴェトナム人側から見たヴェトナムであり、ヴェトナム戦争である。

 本書が突きつけるのは道徳的なジレンマの問題である。


 私たちの文化独特の食事を甦らせようと精一杯努力しますが、食料品は中国系の店に依存せざるを得ないので、どうしても中華料理の味が混じります。これもまた私たちの屈辱を深める原因になりました。私たちの舌には不確かな記憶の甘酸っぱい味だけが残り、それは過去を呼び起こすほどには本物に近いのですが、過去が永遠に失われたことを思い知らせるくらいには本物から離れています。つまり、私たちの普遍的な調味料である魚醤の微妙さや複雑さ、料理に合わせた種類などとともに、過去は失われたのです。

 司令官殿、あなたはどのようにお考えになりますか? プロパガンダですか? どのような夢に駆られてあの難民たちは脱出し、クリストファー・コロンブスでも怖がりそうなガタつく小舟で海に乗り出したのでしょう? 私たちの革命が人民のためのものなら、どうしてこうした人々のなかには脱出を選んだ人たちがいたのでしょう?

 君が何かかもしれないというゲームをして、どんな意味があるんだい? ゲームじゃないんだ、と私は言いました。僕は共産主義者なんだよ。君の仲間だ。もう何年も抵抗と革命のためにスパイをしている。これについてどう思う?

南北に分断された国家で生きなければならないとしたら、南ヴェトナムで生きるのが幸せか、サイゴン陥落後のヴェトナムで生きることが幸せか、どちらだろうかと考えた。
語り手の大尉は、モグラとしての活動の向こうに希望の光が見えたのだろうか。
それならば、彼は何を信じ、どのような社会の到来を望んでいるのか、考え込んでしまった。
人々の生きがいと幸せとは何か。

ヴェトナム戦争当時、ぼくは若者だった。ぼくは、ベトコンに同情をしていた。
その後のヴェトナムは、人々にとって住みやすく幸せな社会が到来したのだろうか。
ぼくは、情報不足で判断が出来ないが。
日本企業の進出、投資も増えていると聞くが。

ピュリッツァー賞/アメリカ探偵作家クラブ賞/受賞

    『 シンパサイザー/ヴィエト・タン・ウェン
                     /上岡伸雄訳/早川書房


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