ゆめ未来     

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ディオゲネス変奏曲

2019年08月19日 | もう一冊読んでみた
ディオゲネス変奏曲/陳浩基    2019.8.19  

陳浩基著 『ディオゲネス変奏曲』 を、読みました。
面白い、と感じた作品からそうでないものまで、いろいろでした。
ぼくには、この短編集の中でも比較的短い作品が面白かった。

  サンタクロース殺し
  頭頂
  時は金なり
  各習作等

 「“馬鹿”とは言わんよ。でもそんなものは、一万字の短編小説に一人の人生をまとめるみたいで、なんだかつまらないじゃないか」

 人々のざわめきに覆われた街頭で、藍宥唯(らんゆうい)はひとり孤独だつた。......なにより藍宥唯を不安にさせるものは、自分がおびただしい大衆のひとり、砂漠の砂粒ひとつでしかないと知ってしまったことだ。どこへ行こうと同じ無力感が、時代の巨大な奔流のなかで彼の生死などは取るにたりないのだと告げていた。自分が消えたところで太陽は変わらず輝き、社会は変わらずに動き、人類は変わらずに滅亡へ向かっていく。

 藍宥唯は愛しているわけではない。彼が愛するのは支配の感覚、陰からのぞき見ることの快感だった。
 彼はただ陰からのぞき見る快感を求めているだけだった。


 相棒がつねづね口にしていた言葉が、ここでも彼の脳裏に浮かんだ。
 「人間はふたつに分けられる。“他人を利用する人間”と“他人に利用される人間”だよ」


 孤独な、天によって死神と定められたひとり。

 この世に悪が存在しなかったなら、市民の憧れるヒーローも存在せず、上も目を光らすべき相手を失う……社会が整っていなければ、正義も悪も生きていけない

 「人間は信じられん、幽霊だって同じように信じられん。それがわかればもうとやかく考えはせんよ」

中国系のミステリを読む機会は、めずらしい。


    『 ディオゲネス変奏曲/陳浩基/稲村文吾訳/ハヤカワ・ミステリ 』

コメント
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