ゆめ未来     

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朱色の化身/塩田武士

2022年08月08日 | もう一冊読んでみた
朱色の化身 2022.8.8

塩田武士 『 朱色の化身 』 を読みました。

証言者一人一人の話から、辻珠緒の実像に徐々に迫っていく。この過程が何とも面白い。

能登の 雄島。京都の「 可必館 」が、物語に度々登場します。
ぼくも行ったことのある場所であり、美術館なので懐かしかった。
特に、可必館はひっそりとしたたたずまいの地味な美術館ですが、何年たっても印象深く思い出されるのが不思議です。

表計算ソフト「 ロータス123 」 が、話題になります。
ぼくも、よくロータス123を使って仕事をしていました。
いつしかマイナーになって、消えてしまったソフト。
使いやすくて、好きなソフトでしたが。
人気と実力は、別物。

ぼくも、この物語と同時時代を生きました。話題話題で、昭和の時代が懐かしく思い出されます。



 頼んでもいないのに幸せな記憶が呼び起こされ、知子の心を突き刺していった。父と一緒に縄跳びをした昨日の夕方に帰りたい。母とココの散歩に行った一昨日の朝に戻りたい。だが、四十五年の間守り続けた店がなくなった今、生活が元通りなるはずもなかった。
 何の前触れもなく焼け落ちた家族の幸せを思い、知子は堪えきれなくなって父のもとへ走った。


 「依存とは何か」ということですが、これは「ある行動」が多幸感をつくり、その多幸感を追い求めるが故に、行動が異常になって問題が発生している状況、を指します。「ある行動」は人によって、お酒であったり、ギャンブルであったり。そして、依存のリスク要因で大きいのが「いつでもどこでもできる」という状態です。まさにスマホほどそれに該当するものはありません

 この一件があってから、私、同級生の男の子に君づけするの止めたんです。やっぱり、この世の男女って不公平やと思って、珠緒も私も父親にビクビクして、振り回されてつらい思いしてきたんで。何でかって考えてもよく分からないんです。

 あぁ……そうですね。それから四十年近く経つんですね。まぁ、いろいろありました。
 ちょっと今日はしゃべり過ぎました。疲れたわ。


 「俺たちの将来のために」と前川は言った。
 だから金を貯めよう------


  『 朱色の化身/塩田武士/講談社 』


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