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その雪と血を/ジョー・ネスボ

2017年02月11日 | もう一冊読んでみた
その雪と血を   2017.2.11

 自分の愛の強さに恐ろしくなる

殺し屋の物語なのだが、詩的。
人殺しを生業としているオーラヴだが、これがどんな訳だかロマンチスト。
難読症なのに図書館が好き、物知りなのに計算はとんと駄目。
物語を読み聞かせる母と子の話しには、ほっこり。
父と母、そして、その子との関係、物語は限りなく叙情性豊かだ。

 雪……

 積もったばかりの雪が手のひらに冷たかった。手を合わせてその粉雪を丸めてみた。だが、何を作ろうとしても結局くずれて指のあいだからこぼれてしまう。

 血……

 ズボンの生地から染み出してきた血がしたたり、卵の白身のようなどろどろした膜に包まれて雪の上に落ちた。消えてしまうのはわかったいた。涙と同じように雪に沈んでいって、見えなくなってしまうのは。だが、意外にも、血の雫はそこで赤く震えているだけだった。

 そして、殺し……

 時間ならいくらでもある。待つのは好きだ。決断してから実行するまでのあいだの時間が好きなのだ。それは短い人生の中でおれが何者かになれる唯一の時、唯一の日々だ。そのあいだだけは誰かの運命になれる。

 オスロのヘロイン市場は逼迫した……

 人の欲というのは雪解け水のようなものだ。ひとつのルートをふさがれると、黙って新たなルートを見つける。
 ------満たされていない需要は、満たされることを求める。


ジョー・ネスボの『その雪と血を』は、なによりも愛の物語なのです。

 自分がお山の大将にならなければ気のすまないそういう手合いが、妻の不貞を知ったら、話はすこしばかり厄介になる。何かを見て見ぬふりができるようになれば、そして女房の浮気のひとつやふたつ大目に見られるようになれば、世のダニエル・ホフマンたちももっと単純な人生を送れるだろうに。

 女たちのなかには、自分にとって何が最善なのかわからず、見返りを求めることもなくひたすら愛をあたえる者がいる。まるでその報いのなさそのものが、自分を高めてくれるとでもいうように。


p177と短い小説なのだが、ぼくには読むのに意外に時間がかかってしまった。
読むのに、リズムがつかめなかった。
ときどき出くわす。
読んで、楽しめるミステリーなのに。

忘れられない、この言葉--------

 人を愛で満たすことと溺れさせることのあいだには、わずかなちがいしかないのだ。

『2017年版 このミステリーがすごい!』 海外編第11位

 『 その雪と血を/ジョー・ネスボ/鈴木恵訳/ハヤカワ・ミステリ 』



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