ゆめ未来     

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今週の読書! 横道世之介/パーク・ライフ/パパ、ママ、わたし

2015年10月17日 | もう一冊読んでみた
 今週は、この3冊。

横道世之介/吉田修一   2015.10.17

 新大久保駅乗客転落事故
新大久保駅乗客転落事故は、2001年(平成13年)1月26日(金曜日)の19時14分頃に東日本旅客鉄道(JR東日本)山手線新大久保駅で発生した鉄道人身障害事故である。
当時の森喜朗内閣総理大臣より書状が贈られ、警察庁からは警察協力章が授与された。
しかしカメラマンと暮らしていた母親は国や市からの表彰について、近所の知人に対して本当はそっとしておいてほしい、美談であっても息子が死んだ事には変わりがない、と嘆き、事故から数年後に孤独死した。
最初に転落した男性が駅構内の売店で購入した酒を飲んでいたことが判明し、JR東日本は通勤圏の一部駅構内での酒類の販売を一時取り止めた。(ウィキペディア)


 このカメラマンさんが、横道世之介のモデルらしい。
ぼくは、このウィキペディアの一文を読んでいたたまれない気持ちになりました。

思えば最近、旅に出ることができない事情がある。
だから、「一歩あしをのばして」の話が増えない。
東京が好きで、年に数回はでかけ、この小説でも舞台になる、東京駅、新橋、赤坂、渋谷界隈を、てくてくとさまよい、歩き回るのが好きだったんだがなあ~なんだか、さびしい。

さて、『横道世之介』ですが、実際の生活の中では、この物語の誰ともお友達や知り合いになりたいとは、ぼくは多分思わないだろう。
それでも一番、興味を持ったのは、強いてあげるとすれば、千春さんですか。
こんな女と関わったら最期、死ぬような思いをさせられるだろうなと感じるのですが。
この小説はおもしろく、読んでいて同時代の青春を一緒に生きてきた気がします。

 「あの、私、見送られるのは苦手なんですの」

 「怒りってさ、結局、他人に何かを求めることから生まれるんだよ」
 「他人に何かを求めて、それがかなわないから怒る。それって俗物以外の何物でもない。それに怒りなんて何の役にも立たない。ただ、公平な目を失うだけのこと」

 世之介だって十四、五歳の思春期ど真ん中の少年なので、「放っといてくれよ」と言ってみたい。しかし言わなくても放っとかれるから、言う機会さえないのである。
そうか。あの時、大隅に「乳首の横、つねって」と頼めば良かったんだ。

 「……でも、なんか違うなって思ってたんだよね。なんて言えばいいのかな、狭い町の中で好きな人を見つけて、結婚して、幸せになって……、そうじゃなくて、私、元々闘争本能が強いんだと思う。何かがほしいんじゃなくて何かを捨てたいんだと思うのよ


 大切に育てるということは「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることではないかと思う。

 DVDも鑑賞しました………… 祥子ちゃんのあのくそ丁寧な言葉遣いがもたらす
                     独特な雰囲気、醸し出すのはなかなか難しい。

    『 横道世之介/吉田修一/毎日新聞社 』



パーク・ライフ/吉田修一   2015.10.17

 『パーク・ライフ』には、「パーク・ライフ」と「flowers」の2編の短編が収められています。

「パーク・ライフ」は、日比谷公園のベンチでお昼の短い休み時間を過ごす男女ふたりの若者のお話です。
これといったことが起こるわけではないのですが、味わいのある作品でした。

「flowers」は、悪魔的な人間、元旦にまつわる話が強く印象に残ります。
坦々と静かに流れる話のなかで、悪魔的人間、元旦の姿が際立ち、そそり立っている。

 ときどきぞっとするよ。結局、自分に自信がねぇから、男を次から次に代えて、その数で自分の価値を計るんだよな。何人から好かれたかじゃなくて、誰から好かれたかってことが大事なのによ

 「人間、ああなったら終わりだな
 「慣れちゃてるんだよ。自分でも知らず知らずのうちに、馬鹿にされることに慣れちゃてるんだ。人間、馬鹿にされるのに慣れるようになったら、終わりだよ」

 「うちのなんか、和風で」
 「和風?」
 「そう。和風のおチンチンなもので」


 和風のおチンチンて、どんなおチンチンなんだよ。

    『 パーク・ライフ/吉田修一/文藝春秋 』



パパ、ママ、わたし/カーリン・イェルハルドセン   2015.10.17

 カーリン・イェルハルドセンの三冊目は、『パパ、ママ、わたし』を読みました。
この本は、「ショーベリ警視が指揮をとるハンマルビー署シリーズ」の第二作目です。

  東京創元社のウェブマガジン/Webミステリーズ
  スウェーデン・ミステリの新しい才能が開花する
                       >>>>> ショーベリ警視シリーズ

読み始めは、何が起こっているのか皆目分からなくて、読みづらかったが、そのうち話が転がり始めると大変面白く読めます。
サンデーンの愛娘イェンニーに対する接し方に感動します。
うちの娘があのような状況に置かれたら、あんなに冷静に接することは、ぼくには出来ないと思いました。
サンデーンは、本当に優しい男なのです。

 プライドにこだわらないのが、サンデーンの特質の一つだ。これまでもずっとショーベリの後塵を拝してきても、決して嫉みや羨みを見せず、それはある意味サンデーンの別の特質である寛容さの表れでもあった。彼はありのままを受け取り、めったに悩まず、決してへこたれなかった。

 つまり、人は自分を変えるより、すでに持ち合わせている道具を利用し、かつそれを進歩させるべきだということなのだ。

 人生は坦々と過ぎていき、良くも悪くもなかった。ただの人生というだけだった。

 エリーが死んだら、誰が寂しがってくれるだろう。絶対誰もいない。
 ニーナや他の友だち連中は? 世間の手前少しは涙を流してくれるかもしれないが、すぐに忘れるに決まっている。人生は続くものだから。この世に居場所のない人間は、死んだら穴も残さない。


  『 パパ、ママ、わたし/カーリン・イェルハルドセン/木村由利子訳/創元推理文庫 』


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