■フロスト始末(上・下)/R・D・ウィングフィールド 2017.9.4
下品で抱腹絶倒のミステリ、R・D・ウィングフィールドの 『フロスト始末(上・下)』 を読みました。
フロストの下品と滑稽につき合わされたもされた上下二巻で、p912。
飽きずに一気に読み切った。
それだけ面白かったと言うことでしょうか。
フロスト、小説で読む分には面白いと感じる人物だが、もし、彼が、あなたやぼくの身近な人間として接していたら、どうだろう、これほど鬱陶しい奴もいないかも知れない。
マレット署長が、もっとまともで常識的な上司なら、フロストの見方も悪い方に少しは傾いてたかも知れない。
また、ジョン・スキナー主任警部のパワハラに悩まされながらも、歯を食いしばって捜査に励む健気な若い見習い婦警ケイト・ホールビー巡査には、スケベなフロストも邪なビョウキを起こすことなく、「陰になり日向になって励ます」 心やさしい一面もみせます。
とにかく登場人物の性格も事件も人殺しも全てがてんこもりなんですね。
いつものように、このミステリの雰囲気を訪ねてみます。
「警察長のちんぽこを握って意のままにしごき立てることができるとしても、だからって今すぐ捜索を開始しなくちゃならないってことにはならないね」
ビーズリーのオフィスのドアがすさまじい勢いで開き、当のビーズリーが顔を出すなり、ご婦人に向かって太い指を突きつけた。「おい、そこのばばあ、何をぐずぐずしている? さっさと入れ。用があるからよんだんだろうが」
「うちの社員の邪魔をして貴重な時間の無駄遣いをさせるんじゃない。そいつを雇っているのは仕事をさせるためだ。おたくとくそくだらない無駄話をさせるためじゃない」
「おたくの社長に会うたびに、あの顔面に一発お見舞いしてやりたくなるんだ」とフロストは秘書のご婦人に向かって言った。
ご婦人は速記帳を抱えて立ち上がり、実に何ともチャーミングな笑みを浮かべた。「あら、顔面ですの、警部? 股間というわけにはまいりませんでしょうか?」
「スキナーも気の毒にな。貝にあたっちまったんだと。きみにも経験があるんじゃないかい、アイダ、珍種の巻き貝の剥き身をいそいそと呑み込んで、あら、まあ、どうしましょう、なんて事態になっちまったことが?」
時には、自身をみつめ自己批判をしてみるのですが。
「くそ! おれの立場は人間のひりだすくさくてばっちいものまみれってことじゃないか」
両手で顔をこすりながら、おれはいつだってこうだ、と胸の内でつぶやいた。いつだって薄い氷のうえでスケートをするような真似ばかりしている。いつかきっと、その薄氷がぱりんと割れて、凍りつくほど冷たい水のなかに落っこちる日が来るにちがいない。
R・D・ウィングフィールド氏は、本書『フロスト始末』を最後の作品として、2007年、79歳で亡くなりました。
これで、新たなフロストシリーズを読むことが出来なくなったのかと思うとさびしくなります。
しかし、ウィングフィールド亡き後、別の作家が、「巡査部長時代のフロスト」を作品化、すでに4作品が刊行された模様です。(巻末の情報より)
それにしても訳者の芹澤恵氏は、てんこ盛りな下品な言葉の翻訳、さぞ大変だったこととご同情いたします。
『 フロスト始末(上・下)/R・D・ウィングフィールド
/芹澤恵訳/創元推理文庫 』
下品で抱腹絶倒のミステリ、R・D・ウィングフィールドの 『フロスト始末(上・下)』 を読みました。
フロストの下品と滑稽につき合わされたもされた上下二巻で、p912。
飽きずに一気に読み切った。
それだけ面白かったと言うことでしょうか。
フロスト、小説で読む分には面白いと感じる人物だが、もし、彼が、あなたやぼくの身近な人間として接していたら、どうだろう、これほど鬱陶しい奴もいないかも知れない。
マレット署長が、もっとまともで常識的な上司なら、フロストの見方も悪い方に少しは傾いてたかも知れない。
また、ジョン・スキナー主任警部のパワハラに悩まされながらも、歯を食いしばって捜査に励む健気な若い見習い婦警ケイト・ホールビー巡査には、スケベなフロストも邪なビョウキを起こすことなく、「陰になり日向になって励ます」 心やさしい一面もみせます。
とにかく登場人物の性格も事件も人殺しも全てがてんこもりなんですね。
いつものように、このミステリの雰囲気を訪ねてみます。
「警察長のちんぽこを握って意のままにしごき立てることができるとしても、だからって今すぐ捜索を開始しなくちゃならないってことにはならないね」
ビーズリーのオフィスのドアがすさまじい勢いで開き、当のビーズリーが顔を出すなり、ご婦人に向かって太い指を突きつけた。「おい、そこのばばあ、何をぐずぐずしている? さっさと入れ。用があるからよんだんだろうが」
「うちの社員の邪魔をして貴重な時間の無駄遣いをさせるんじゃない。そいつを雇っているのは仕事をさせるためだ。おたくとくそくだらない無駄話をさせるためじゃない」
「おたくの社長に会うたびに、あの顔面に一発お見舞いしてやりたくなるんだ」とフロストは秘書のご婦人に向かって言った。
ご婦人は速記帳を抱えて立ち上がり、実に何ともチャーミングな笑みを浮かべた。「あら、顔面ですの、警部? 股間というわけにはまいりませんでしょうか?」
「スキナーも気の毒にな。貝にあたっちまったんだと。きみにも経験があるんじゃないかい、アイダ、珍種の巻き貝の剥き身をいそいそと呑み込んで、あら、まあ、どうしましょう、なんて事態になっちまったことが?」
時には、自身をみつめ自己批判をしてみるのですが。
「くそ! おれの立場は人間のひりだすくさくてばっちいものまみれってことじゃないか」
両手で顔をこすりながら、おれはいつだってこうだ、と胸の内でつぶやいた。いつだって薄い氷のうえでスケートをするような真似ばかりしている。いつかきっと、その薄氷がぱりんと割れて、凍りつくほど冷たい水のなかに落っこちる日が来るにちがいない。
R・D・ウィングフィールド氏は、本書『フロスト始末』を最後の作品として、2007年、79歳で亡くなりました。
これで、新たなフロストシリーズを読むことが出来なくなったのかと思うとさびしくなります。
しかし、ウィングフィールド亡き後、別の作家が、「巡査部長時代のフロスト」を作品化、すでに4作品が刊行された模様です。(巻末の情報より)
それにしても訳者の芹澤恵氏は、てんこ盛りな下品な言葉の翻訳、さぞ大変だったこととご同情いたします。
『 フロスト始末(上・下)/R・D・ウィングフィールド
/芹澤恵訳/創元推理文庫 』
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