今週は、この2冊。
ゲルマニア/蛇の書/
■ゲルマニア/ハラルト・ギルバース
1944年6月6日 連合軍によるノルマンディー上陸作戦が敢行された。
舞台は、その頃の首都ベルリン。
日に日に敗色を濃くするベルリンは、日夜、連合軍の空襲により廃墟同然の
光景を広げていた。
『ゲルマニア』を読むにつれて、ハラルト・ギルバースが、なぜこのミステリを書きたかったのか、それが分かってきます。
敗戦間近のドイツの歴史を書きたかったのです。
ギルバースは、「著者あとがき」の冒頭、次のように述べています。
本書はフィクションですが、書かれた時代状況は創作ではありません。本書を執筆するにあたって、当時のできごとをできるかぎり再現するように心がけました。ベルリン市民が、あの戦争が辿った結末を知らないままに、一九四四年初夏の怒濤の日々をどのように生きたかを描きたかったからです。
ミステリとしても秀逸です。
主人公オッペンハイマー、フォーグラー、ヒルダ、元同僚、元戦友、ナチ高官など生き生きと描かれています。
明日、前線に発つ。
「明日になれば、この男が存在した証拠は一切なくなる。この倉庫も消えてなくなるだろう。
だれもそのことを思い出さない」
オッペンハイマーにも、フォーグラーの言いたいことがはっきりわかった。
事情を知る者は沈黙させられるのだ。
フォーグラーは吸いかけの煙草を捨てて、最後の紫煙を吐いた。「この会話は行われなかった。さらばだ、警部」
フォーグラーがそばに来て、細長い小さな金属のカプセルを差し出した。オッペンハイマーは驚いてそれを見つめた。
「青酸カリだ」フォーグラーはいった。「わたしより、きみの方が必要だろう」
ドキッとさせられる指摘がありました。
たいていの連続殺人犯は先に動物を虐待したり、放火をしたりする。多くの場合、その両方をするわよね」
『 ゲルマニア/ハラルト・ギルバース/酒寄進一訳/集英社文庫 』
アドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、
建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された
.........世界首都ゲルマニア
■蛇の書/ハラルト・ギルバース
『蛇の書』を読みました。
歴史ある雰囲気漂うバルセロナの街角、大聖堂、突如として響きわたる時鐘、しっとりと雨に濡れる石畳とガーゴイル、そこにたたずんでいるような臨場感。
中世の錬金術師、異端審問官、魔女、明日が見える女予言者、夜のナイチンゲール、羊皮紙、古文書、パリンプセスト、ギリシャ神話など中世の歴史的雰囲気にどっぷりと浸かれるミステリーでした。
場面場面では、大いに楽しむことができるのですが、ミステリーとしての緊張や次の展開に寄せる期待感のなさ(少し大げさで希薄さ)など、若干ミステリーとしての魅力に欠けるかも知れません。
それに少々、重たい(p569)。
読んでいて面白いところを発見しました。
「歯が抜ける夢を見ること」は、洋の東西を問わず縁起が悪いようです。
ネットで検索しても、「凶夢の意味」の解説がゴロゴロと転がり出ます。
フェランが歯の抜ける夢を見たのなら、事態はもっと悪くなっていただろう、とギレルモは言う。歯が抜けるのは金銭的トラブルか、差し迫る死の兆候のサインであって、どちらも望ましい未来ではないからだ。
これまた、「洋の東西を問わず」、「ただそういうことが起きたんだ」と無理矢理、納得させられることが起きるようです。
一九三六年に村で起きた暴動と一九四〇年代の選別運動で、両親双方の祖父母が死亡した。どうして、なぜそうなったかは重要じゃない。当時の多くのことと同様、ただそういうことが起きたんだ。
一口メモ:このミステリーを読みながら、こんな言葉も検索してみました。
【パリンプセスト】
パリンプセスト(英語:Palimpsest)とは、書かれた文字等を消し、別の内容を上書きした羊皮紙の写本のことである。
紙が普及する以前には羊皮紙を使うことが一般的であったが、高価であったため、不要となった写本を再利用することが行われた。消された元の文章等は肉眼では判別しがたいが、紫外線やX線等を利用する特殊なスキャナを使って復元することができ、そこに貴重な古文書が隠れている場合がある。
(ウィキペディアより)
【カサンドラ】
語源:カサンドラというのは、ギリシア神話に登場するトロイの王女の名前である。太陽神アポロンに愛されたカサンドラは、アポロンから予知能力を授かる。しかし、その能力でアポロンに捨てられる未来を予知したカサンドラは、アポロンの愛を拒絶したので、怒ったアポロンに「カサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけられた。カサンドラは真実を知って伝えても、人々から決して信じてもらえなかった。
(ウィキペディアより)
1976年に公開された『カサンドラ・クロス』という映画を思い出しました。
『 蛇の書/ハラルト・ギルバース/宇佐川晶子訳/早川書房 』
ゲルマニア/蛇の書/
■ゲルマニア/ハラルト・ギルバース
1944年6月6日 連合軍によるノルマンディー上陸作戦が敢行された。
舞台は、その頃の首都ベルリン。
日に日に敗色を濃くするベルリンは、日夜、連合軍の空襲により廃墟同然の
光景を広げていた。
『ゲルマニア』を読むにつれて、ハラルト・ギルバースが、なぜこのミステリを書きたかったのか、それが分かってきます。
敗戦間近のドイツの歴史を書きたかったのです。
ギルバースは、「著者あとがき」の冒頭、次のように述べています。
本書はフィクションですが、書かれた時代状況は創作ではありません。本書を執筆するにあたって、当時のできごとをできるかぎり再現するように心がけました。ベルリン市民が、あの戦争が辿った結末を知らないままに、一九四四年初夏の怒濤の日々をどのように生きたかを描きたかったからです。
ミステリとしても秀逸です。
主人公オッペンハイマー、フォーグラー、ヒルダ、元同僚、元戦友、ナチ高官など生き生きと描かれています。
明日、前線に発つ。
「明日になれば、この男が存在した証拠は一切なくなる。この倉庫も消えてなくなるだろう。
だれもそのことを思い出さない」
オッペンハイマーにも、フォーグラーの言いたいことがはっきりわかった。
事情を知る者は沈黙させられるのだ。
フォーグラーは吸いかけの煙草を捨てて、最後の紫煙を吐いた。「この会話は行われなかった。さらばだ、警部」
フォーグラーがそばに来て、細長い小さな金属のカプセルを差し出した。オッペンハイマーは驚いてそれを見つめた。
「青酸カリだ」フォーグラーはいった。「わたしより、きみの方が必要だろう」
ドキッとさせられる指摘がありました。
たいていの連続殺人犯は先に動物を虐待したり、放火をしたりする。多くの場合、その両方をするわよね」
『 ゲルマニア/ハラルト・ギルバース/酒寄進一訳/集英社文庫 』
アドルフ・ヒトラーがグランド・デザインを考え、
建築家アルベルト・シュペーアが細部デザインを任された
.........世界首都ゲルマニア
■蛇の書/ハラルト・ギルバース
『蛇の書』を読みました。
歴史ある雰囲気漂うバルセロナの街角、大聖堂、突如として響きわたる時鐘、しっとりと雨に濡れる石畳とガーゴイル、そこにたたずんでいるような臨場感。
中世の錬金術師、異端審問官、魔女、明日が見える女予言者、夜のナイチンゲール、羊皮紙、古文書、パリンプセスト、ギリシャ神話など中世の歴史的雰囲気にどっぷりと浸かれるミステリーでした。
場面場面では、大いに楽しむことができるのですが、ミステリーとしての緊張や次の展開に寄せる期待感のなさ(少し大げさで希薄さ)など、若干ミステリーとしての魅力に欠けるかも知れません。
それに少々、重たい(p569)。
読んでいて面白いところを発見しました。
「歯が抜ける夢を見ること」は、洋の東西を問わず縁起が悪いようです。
ネットで検索しても、「凶夢の意味」の解説がゴロゴロと転がり出ます。
フェランが歯の抜ける夢を見たのなら、事態はもっと悪くなっていただろう、とギレルモは言う。歯が抜けるのは金銭的トラブルか、差し迫る死の兆候のサインであって、どちらも望ましい未来ではないからだ。
これまた、「洋の東西を問わず」、「ただそういうことが起きたんだ」と無理矢理、納得させられることが起きるようです。
一九三六年に村で起きた暴動と一九四〇年代の選別運動で、両親双方の祖父母が死亡した。どうして、なぜそうなったかは重要じゃない。当時の多くのことと同様、ただそういうことが起きたんだ。
一口メモ:このミステリーを読みながら、こんな言葉も検索してみました。
【パリンプセスト】
パリンプセスト(英語:Palimpsest)とは、書かれた文字等を消し、別の内容を上書きした羊皮紙の写本のことである。
紙が普及する以前には羊皮紙を使うことが一般的であったが、高価であったため、不要となった写本を再利用することが行われた。消された元の文章等は肉眼では判別しがたいが、紫外線やX線等を利用する特殊なスキャナを使って復元することができ、そこに貴重な古文書が隠れている場合がある。
(ウィキペディアより)
【カサンドラ】
語源:カサンドラというのは、ギリシア神話に登場するトロイの王女の名前である。太陽神アポロンに愛されたカサンドラは、アポロンから予知能力を授かる。しかし、その能力でアポロンに捨てられる未来を予知したカサンドラは、アポロンの愛を拒絶したので、怒ったアポロンに「カサンドラの予言を誰も信じない」という呪いをかけられた。カサンドラは真実を知って伝えても、人々から決して信じてもらえなかった。
(ウィキペディアより)
1976年に公開された『カサンドラ・クロス』という映画を思い出しました。
『 蛇の書/ハラルト・ギルバース/宇佐川晶子訳/早川書房 』
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