さてこの週末、何に拘束されていたかというと・・・わかりますよね?! センター試験です! 試験監督をやってたんですよ。あーしんどかった。
今回気がついたのは、『最近のロン毛男子は机にむかう時に前髪をピン(クリップ?)で留める』ということ。そんなもん女の使うもんだと思ってた世代には新鮮でした。なかなか機能的でかっこいいと思う。自分はムリだけど。(笑)
今年の生物で出題されたの遺伝学の問題は、第3問。問題の内容はここに掲載しませんので、新聞かなんかで見てくだされ。
第3問AはDNAの構成成分からその生物の持つDNAの構成する構造や倍数性(ploidy)を判断する問題です。DNAの持つ基本構造について正しい理解を持っているか問われています。
問1では、二重鎖と単鎖DNAの違いを問うています。二重鎖のポイントはAとT、CとGが対合していますから含量は同じはずです。単鎖はそれだけでふわふわしているからAとT、CとGの含量はでたらめ。んなわけで、『ク』が単鎖DNAを含んでいます。問題の表1を見ると同じ含量といっても誤差があって完全に一致してはいません。デジタルな人にはこれは許せないでしょうけども、実験で出てくるデータというのは常に誤差を抱えて出てきます。それを科学者はいつも判断しているのです。実際の実験では本当に迷うようなギリギリのデータが出ます。精度を上げるためには実験を繰り返しデータをさらに蓄積する必要があります。そして最後はやっぱり研究者の判断。
問2は倍数性の問題。肝臓・・・つまり栄養細胞(vegitative cell)は二倍体、精子はもちろん一倍体。各1個当たりの平均のDNA量を見ると『ウ』が『エ』の約2倍、『エ』が『オ』の約2倍。GC含量の比がだいたい同じなのが『ウ』と『エ』なので、このふたつが同一の生物由来のサンプルでしょう。だったら精子(一倍体)は『エ』。
問3は二重らせん構造をとっているDNAは当然二重鎖である。単鎖では二重らせんにはなりませぬ。んなわけで、AとT、CとGが対合していますから含量は同じ。TがGの2倍量含まれていたならAも2倍・・・・A:T:G:C=2:2:1:1の比なんで、Aの含量は33.4%。
第3問Bはメンデルの法則の応用問題。
問4は遺伝学用語をちゃんと知ってるか問うています。サは優性、シは劣性なのはいいですね?問題はスですな。英語で言うとsemidominantの関係となるので日本語に訳すと『不完全優性』でしょう。だから答えは7。普段使ってる専門用語のほとんどは英語なんで、日本語でどうゆうのか知らんかったりします。んなわけで、ちょっと迷った。
問5ではメンデルの法則をつかって、子孫から親の遺伝子型を推測します。黄緑がPpのヘテロ、緑がppのホモなのはいいですね?問題は、草丈です。草丈が高いのはQQかQqの可能性があります。低いのは劣性形質なのでqq。高いのと低いのを掛け合わせると高いのしか生まれなかった。つまり、草丈が高い方の遺伝子には低くなる遺伝子はなかったってことになります。んなわけで、この交雑はPpQQ x ppqqだったことになりますな。遺伝解析を仕事にしているといっつもこんなこと考えるはめになります。楽しいよ。(笑)
問6はそのまた子孫はどうなるかって問題。D1の自家受粉・・・自分で自分とセックスするなんて植物は大胆ですなぁ。そんなことはともかくですね、PpQq x PpQqの掛け合わせです。PPとPpとpPとppに対してQQとQqとqQとqqの遺伝子型を組み合わせれば答えは簡単。黄・高:黄緑・高:緑・高:黄・低:黄緑・低:緑・低=3:6:3:1:2:1。え?ややこしい??
問題文の中の『発芽後2週間を過ぎると枯死するため、子孫を残すことはできない。このことからPは劣性の致死作用があることになる』という文章が引っかけになっていて、『黄』つまりPPは0(ゼロ)だと思う人がいると思います。しかし子孫を残せるまで育たないだけで、2週間目までは生きてるので0(ゼロ)と数える必要はありません。まあ、実際にやると黄色と黄緑と緑の判別では微妙な色合いの個体が出てきて誤差だらけになると思うよ。メンデル自身のエンドウ豆の分離比も、かなり微妙な判断が入っているそうな。
とにかくですな。出てきたデータから生物というブラックボックスの中を確率論的に推論するのが遺伝学の基礎ってわけです。データはたいていギリギリであやふや、白黒つけられる簡単なケースはほとんどありません(簡単ならとっくの昔に誰かに研究されている)。常に判断が問われ、論じた後も自分の判断に疑いを持ち証明実験を繰り返さないといけません。心のどこかで自分を常に疑ってるのですな。潔く決断するがそれでいて疑い深く、蛇のようにしつこくつまんないことをいつまでも覚えていて、分かんないことは分かんないけどそのうち分かるんじゃない?てな性格の人に向いている学問です。信じ込み、決め込み、思い込みの深い方は物質を追いかけるような研究の方に向いています。生化学者が遺伝に手を出して失敗するのは、たいていそこんとこが原因。遺伝学はやめておきましょう。(笑)
上の写真は今朝の角間キャンパスへの道。日の出がきれいだった。
受験生のみんな! お疲れさま!! 春はもうすぐだから、もう一頑張りだっ♪
本日のお酒:美丈夫 純米吟醸
今回気がついたのは、『最近のロン毛男子は机にむかう時に前髪をピン(クリップ?)で留める』ということ。そんなもん女の使うもんだと思ってた世代には新鮮でした。なかなか機能的でかっこいいと思う。自分はムリだけど。(笑)
今年の生物で出題されたの遺伝学の問題は、第3問。問題の内容はここに掲載しませんので、新聞かなんかで見てくだされ。
第3問AはDNAの構成成分からその生物の持つDNAの構成する構造や倍数性(ploidy)を判断する問題です。DNAの持つ基本構造について正しい理解を持っているか問われています。
問1では、二重鎖と単鎖DNAの違いを問うています。二重鎖のポイントはAとT、CとGが対合していますから含量は同じはずです。単鎖はそれだけでふわふわしているからAとT、CとGの含量はでたらめ。んなわけで、『ク』が単鎖DNAを含んでいます。問題の表1を見ると同じ含量といっても誤差があって完全に一致してはいません。デジタルな人にはこれは許せないでしょうけども、実験で出てくるデータというのは常に誤差を抱えて出てきます。それを科学者はいつも判断しているのです。実際の実験では本当に迷うようなギリギリのデータが出ます。精度を上げるためには実験を繰り返しデータをさらに蓄積する必要があります。そして最後はやっぱり研究者の判断。
問2は倍数性の問題。肝臓・・・つまり栄養細胞(vegitative cell)は二倍体、精子はもちろん一倍体。各1個当たりの平均のDNA量を見ると『ウ』が『エ』の約2倍、『エ』が『オ』の約2倍。GC含量の比がだいたい同じなのが『ウ』と『エ』なので、このふたつが同一の生物由来のサンプルでしょう。だったら精子(一倍体)は『エ』。
問3は二重らせん構造をとっているDNAは当然二重鎖である。単鎖では二重らせんにはなりませぬ。んなわけで、AとT、CとGが対合していますから含量は同じ。TがGの2倍量含まれていたならAも2倍・・・・A:T:G:C=2:2:1:1の比なんで、Aの含量は33.4%。
第3問Bはメンデルの法則の応用問題。
問4は遺伝学用語をちゃんと知ってるか問うています。サは優性、シは劣性なのはいいですね?問題はスですな。英語で言うとsemidominantの関係となるので日本語に訳すと『不完全優性』でしょう。だから答えは7。普段使ってる専門用語のほとんどは英語なんで、日本語でどうゆうのか知らんかったりします。んなわけで、ちょっと迷った。
問5ではメンデルの法則をつかって、子孫から親の遺伝子型を推測します。黄緑がPpのヘテロ、緑がppのホモなのはいいですね?問題は、草丈です。草丈が高いのはQQかQqの可能性があります。低いのは劣性形質なのでqq。高いのと低いのを掛け合わせると高いのしか生まれなかった。つまり、草丈が高い方の遺伝子には低くなる遺伝子はなかったってことになります。んなわけで、この交雑はPpQQ x ppqqだったことになりますな。遺伝解析を仕事にしているといっつもこんなこと考えるはめになります。楽しいよ。(笑)
問6はそのまた子孫はどうなるかって問題。D1の自家受粉・・・自分で自分とセックスするなんて植物は大胆ですなぁ。そんなことはともかくですね、PpQq x PpQqの掛け合わせです。PPとPpとpPとppに対してQQとQqとqQとqqの遺伝子型を組み合わせれば答えは簡単。黄・高:黄緑・高:緑・高:黄・低:黄緑・低:緑・低=3:6:3:1:2:1。え?ややこしい??
問題文の中の『発芽後2週間を過ぎると枯死するため、子孫を残すことはできない。このことからPは劣性の致死作用があることになる』という文章が引っかけになっていて、『黄』つまりPPは0(ゼロ)だと思う人がいると思います。しかし子孫を残せるまで育たないだけで、2週間目までは生きてるので0(ゼロ)と数える必要はありません。まあ、実際にやると黄色と黄緑と緑の判別では微妙な色合いの個体が出てきて誤差だらけになると思うよ。メンデル自身のエンドウ豆の分離比も、かなり微妙な判断が入っているそうな。
とにかくですな。出てきたデータから生物というブラックボックスの中を確率論的に推論するのが遺伝学の基礎ってわけです。データはたいていギリギリであやふや、白黒つけられる簡単なケースはほとんどありません(簡単ならとっくの昔に誰かに研究されている)。常に判断が問われ、論じた後も自分の判断に疑いを持ち証明実験を繰り返さないといけません。心のどこかで自分を常に疑ってるのですな。潔く決断するがそれでいて疑い深く、蛇のようにしつこくつまんないことをいつまでも覚えていて、分かんないことは分かんないけどそのうち分かるんじゃない?てな性格の人に向いている学問です。信じ込み、決め込み、思い込みの深い方は物質を追いかけるような研究の方に向いています。生化学者が遺伝に手を出して失敗するのは、たいていそこんとこが原因。遺伝学はやめておきましょう。(笑)
上の写真は今朝の角間キャンパスへの道。日の出がきれいだった。
受験生のみんな! お疲れさま!! 春はもうすぐだから、もう一頑張りだっ♪
本日のお酒:美丈夫 純米吟醸