遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

今年は醤油醸すぞっ

2009-03-09 21:45:27 | たわごと
今シーズンは醤油を醸すことにしました。2種類のヨーグルトは止めたわけではありませんよ。ちゃんと毎朝食べてます。
大徳醤油のキットを通販で購入して、昨日受けとりました。昨日から塩を水に溶かしてまして、今日麹を仕込みました。出来上がりまで、だいたい1年くらいかかるそうです。
キットには水と塩と麹、そして、でき上がった時の見本としての醪と醤油がついていました。麹は麦と大豆ではぜ込みまで済ませて乾燥させたものがビニル袋に入っていました。大豆の蒸煮時間とか僕にもいじらせて欲しかったですが、雑菌が生えたら困りますからそうもいきませんよね。醤油も味噌も、乳酸菌、酵母、麹カビのそれぞれを調和して醸させた醗酵食品でありまして、購入した麹は乳酸菌の後、麹カビと酵母が大豆と麦で繁殖したものが乾燥されたものです。これに食塩水を加えて乳酸菌の増殖を抑え、酵母もSaccharomyces cerevisiaeのたぐいも増殖できなくなって、耐塩性酵母Zygosaccahromyces rouxiiが優勢になります。昔はこの食塩水が海水だったわけですな。おそらく魚醤がルーツに当たるので海水が醸造に使われるのではないでしょうか。
『もやしもん』では、味噌・醤油酵母の名前が連載当初Saccharomyces rouxiiとされていたようですが、単行本ではZ. rouxiiと学名が改められています。"Zygo-"の接頭語がつくのは僕が学生のころですから30年弱前のことのはずです。たしか工業微生物学の講義で、最初"Zygosaccharomyces"だったのが、"Saccharomyces"になって、結局"Zygosaccharomyces"に戻ったとかなんとか聞いた覚えがあります。rouxiiで見つかった内在性プラスミドの名前が当時の学名S. rouxiiの頭文字を使って"pSR1"と名付けられたのですが、学名が"Zygo-"に変わった時にプラスミドの名前はめんどくさいんでそのまま残されたってことです。(笑)
『もやしもん』の作者がS. rouxiiの名を最初に使ったということは、作品を描くときに相当古い情報を参考にしていたようです。まあ分類学の世界は派閥間で見解がかなり異なりますから、素人さんに細かいとこをつっこむと可哀想かもしれません。"Zygo-"の接頭語はラテン語で『接合』を意味します。接合胞子が発見されてそうなったと推測するのが普通ですが、本当にそうなのかは僕は知りません。別に興味ないんで・・・ちなみにZ. rouxiiは耐塩性以外、外見上S. cerevisiaeとあまり変わりません。培地に塩を入れて飼うとS. cerevisiaeと区別できまする。
麹カビとしては、Aspergillus soyaeというカビが味噌や醤油でA. oryzaeとともに重要な役割を果たします。酵母のZ. rouxiiにしてもカビのA. soyaeにしても、耐塩性がポイントです。

今夜は源左ェ門で飲んできました。黒龍の垂れ口は、甘口ではないのにコクと重みがあって華やかな香りに爽やかな酸味とこれまでに飲んだお酒を台無しにしてしまう強い印象のお酒でした。この日、一番の外れが八海山の吟醸というマニアックなお酒の構成でしたよ。常山の正統派の美味しさが救いでした。ただ、「おりがらみ」の意味は不明です。普通の名前を付けてやれば良かったんに。

本日のお酒:八海山 吟醸 + 常山 純米おりがらみ + 黒龍 本醸造垂れ口(うすにごり) + 黒龍 純米吟醸
コメント
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