「学生野郎と娘たち」

「孤高のニッポン・モダニスト 映画監督 中平康」

「学生野郎と娘たち」1960年　日活　監督：中平康

芝居の鬼に麻雀狂、女たらしの学生社長、コールガールの女学生――。とある私立大学を舞台に、多種多様なキャラクターが織りなす青春の悲喜劇。

これはついに中平康の本領を見てしまったって感じ。すんごい！
学生、セイガク、あこがれの大学生・・・
学生運動が盛り上がる手前の時代ってのもちょうど良い感じ。

キャラクター1人1人がとっても生き生きと描かれていく。
しかし、就職のため苦しい戦いを続ける学生野郎よりもここでは娘たちがなんともカッコ良い。
中原早苗の気質、はねっ返り、身のこなし、台詞と、完璧なほどカッコ良いのです。

女ったらしの岡田真澄を三枚起請ばりにやり込める中原早苗。
岡田真澄が貨物船でイタリアに旅たつ際の中原早苗の言動。
ラストでロッキード機に毒づく中原早苗。
中原早苗、今まで見た中で一番カッコ良い。

美人学生でちょっとクールな芦川いづみとの言い合いなんて双方ともに痺れます。
クールで賢そうな芦川いづみが学費稼ぎのためにバーテン見習いからホステスに転じるも経営者のドラ息子にレイプされちゃう。
芦川いづみ、今まで見た中で一番美しい。
それだけにその後の悲しい運命。ドラ息子を殴り殺して自殺しちゃうのにはちょっとビビッてしまった。

その他、社会人経験があり、学内で高利貸ししている楠侑子。
寮長で優等生タイプの高田敏江。
学費値上げ反対で赤い服で抗議署名するため、皆でミシンを踏む女子部学生たち。

ダメ男子の代表は演劇を志す長門裕之。さんざん皆に迷惑をかけていたが、ついに1本のシナリオが完成。息子を東京の大学にやった田舎の鉄道員の父親を題材にしたシナリオが嫌味でなく、泣かせる。迷惑をかけられていた仲間も協力する気になって公演は成功。

仲谷昇の理想家青年学長のクールさも良い。4つの博士号の重さでもって飛行機も遅れる。

何のために大学に行くんだ！

女子寮を初めちゃんとお勉強に励んでいるシーンもあり、団結していく過程もあり今から考えると仲谷学長、そんなに嘆くことないように思えるってのも面白い。
学生気質が変わったとしても作品としてしっかりしているからいつまでも新鮮さを失う事の無い青春群像モノの傑作。

原作は曽野綾子。道理で女子が生き生きとしているわけだ。しかし「キャンパス110番」てタイトルはどうなの？

ラピュタ阿佐ヶ谷