囲棋外交(囲碁外交)ということばがある。
1970年代の毛沢東のアメリカとの間でのピンポン外交に先立ち、1958年に外交部部長に就任した陳毅(1901~1972。中国共産党の十大元帥の一人。後、副首相)が日本との間で、当時民間交流で往来のあった日本の囲碁界の代表団に働きかけ、囲碁選手の定期的な相互交流を実現した。
陳毅は自身、囲碁をよくやられたようで、日本囲碁界から、1963年の代表団の訪中の際、名誉七段の段位が、また死後名誉八段の段位が贈られている。
さて、囲碁や将棋に関する成語で、「棋逢対手」というのがある。 共産党と国民党の黄橋戦役を扱った小説で、徐の《借鍋》という短編がある。
地方の長老の袁福義は、鎮の商業界の仲間に頼まれ、陳毅に国民党との戦争の状況を聞きに行った。新四軍が拠点にしている家に入ると、国民党からの攻撃の銃声が聞こえる中、袁は陳毅から将棋を一局指そうとさそわれた。
“看見袁老先生,我的手作痒起来,我們就一邊対弈,一邊談心吧。”
(訳)袁さんの顔を見ると、手がむずむずしてきます。私たちは将棋を一局指しながら、腹を割って話しましょう。
“棋逢対手嘛!”
(訳)好敵手が来られましたからね。
● 棋逢対手 qi2feng2dui4shou3
【意味】囲碁や将棋で好敵手に出会う。戦いで双方の実力が甲乙つけ難いこと。
・対弈 dui4yi4:対局する「弈」名詞:囲碁 動詞:碁を打つ
・談心:腹を割って話をする
【出典】
《晋書•謝安伝》:“安常棋劣于玄,是日玄惧,便為敵手而又不勝。”
(訳)謝安はいつも囲碁では謝玄に劣っていたが、この日は玄が恐れたので、対戦したが、やはり勝てなかった。
唐•杜荀鶴《観棋》詩:“有時逢敵手,対局到深更。”
(訳)好敵手に出会った時は、対局は深夜にわたる。
「棋逢対手,将遇良才」という言い方をよくします。
● 将遇良才 jiang1yu4liang2cai2
双方の技能が相応であり、腕のある人が腕のある人に出会うこと
・将:将校
・良才:優れた才能を持つ人
囲碁、将棋関係の用語は、戦争や勝負事でよく使われます。先の《借鍋》から、もうひとつ、ことばを紹介します。
● 定局 ding4ju2
【意味】定まった状態。不動の局面
【用例】勝利已成定局
勝利は動かぬところとなった
袁福義は陳毅に次のように質問します。
“這次黄橋戦役,貴軍能有把握短日内定局?”
(訳)今回の黄橋の戦争では、あなたの軍隊は短期間で形勢を固める自信はおありですか?
これに対する陳毅の答えは、
“定局?定局?不,您的馬挿上翅膀,不就飛了。”
(訳)局面がきまったって?いやあなたの馬に羽を挿したら、飛べるのではないですか?
と定局の意味を、戦争ではなく今の自分たちの将棋の勝敗の意味に取り換え、とぼけます。
中国の囲碁界で初めて日本の九段に勝ち、その後の中国囲碁界をリードした陳祖徳が書いた《超越自我》の中で、囲碁用語がいろいろ出てきます。
● 妙着 miao4zhao1
【意味】妙手。巧妙な策略。
【用例】“点湖成棋”的妙着 湖を指して棋盤とするという妙手「着」はいろいろな発音がありますが、zhao1と発音する時は、囲碁、将棋の「一手」の意味となり、また比喩として、策略、手段の意味に使われます。
● 子 zi3 目 mu4
【意味】(囲碁の)目。「三目勝ち」という場合、“勝三子”という使い方をします。棋盤上の枡の交差で見る場合は「目」と言い、囲碁で勝敗を決める為、取った目の数を数えることを“点目”と言います
● 局 ju2
囲碁の盤。囲碁の試合の回数。ゲーム。そこから、形勢、状況の意味にも使われます。
・布局:囲碁の布石。そこから、物事の組み立ての意味に使われます。
「布」は駒を並べる意味で、“棋盤布好了”といえば、将棋盤を並べ終えた、将棋の盤の準備ができた、という意味です。
・開局:対局の最初の段階
・局勢:形勢
● 盤 pan2
(名詞)囲碁、将棋の盤 (量詞)試合を数える
・中盤 試合の中ほどの、勝敗の形勢を決める局面
・終盤 試合の最終局面
1980年代に、「一盤没有下完的棋(未完の対局)」という映画がありました。ここでの「盤」は量詞としての使用例です。
● 収官 shou1guan1
囲碁の試合の最後の段階で、空いた目を埋めていくこと。「官子」とも言う。
・単官:「収官」段階で、目数とは無関係な石を「単官」と言う。
1970年代の毛沢東のアメリカとの間でのピンポン外交に先立ち、1958年に外交部部長に就任した陳毅(1901~1972。中国共産党の十大元帥の一人。後、副首相)が日本との間で、当時民間交流で往来のあった日本の囲碁界の代表団に働きかけ、囲碁選手の定期的な相互交流を実現した。
陳毅は自身、囲碁をよくやられたようで、日本囲碁界から、1963年の代表団の訪中の際、名誉七段の段位が、また死後名誉八段の段位が贈られている。
さて、囲碁や将棋に関する成語で、「棋逢対手」というのがある。 共産党と国民党の黄橋戦役を扱った小説で、徐の《借鍋》という短編がある。
地方の長老の袁福義は、鎮の商業界の仲間に頼まれ、陳毅に国民党との戦争の状況を聞きに行った。新四軍が拠点にしている家に入ると、国民党からの攻撃の銃声が聞こえる中、袁は陳毅から将棋を一局指そうとさそわれた。
“看見袁老先生,我的手作痒起来,我們就一邊対弈,一邊談心吧。”
(訳)袁さんの顔を見ると、手がむずむずしてきます。私たちは将棋を一局指しながら、腹を割って話しましょう。
“棋逢対手嘛!”
(訳)好敵手が来られましたからね。
● 棋逢対手 qi2feng2dui4shou3
【意味】囲碁や将棋で好敵手に出会う。戦いで双方の実力が甲乙つけ難いこと。
・対弈 dui4yi4:対局する「弈」名詞:囲碁 動詞:碁を打つ
・談心:腹を割って話をする
【出典】
《晋書•謝安伝》:“安常棋劣于玄,是日玄惧,便為敵手而又不勝。”
(訳)謝安はいつも囲碁では謝玄に劣っていたが、この日は玄が恐れたので、対戦したが、やはり勝てなかった。
唐•杜荀鶴《観棋》詩:“有時逢敵手,対局到深更。”
(訳)好敵手に出会った時は、対局は深夜にわたる。
「棋逢対手,将遇良才」という言い方をよくします。
● 将遇良才 jiang1yu4liang2cai2
双方の技能が相応であり、腕のある人が腕のある人に出会うこと
・将:将校
・良才:優れた才能を持つ人
囲碁、将棋関係の用語は、戦争や勝負事でよく使われます。先の《借鍋》から、もうひとつ、ことばを紹介します。
● 定局 ding4ju2
【意味】定まった状態。不動の局面
【用例】勝利已成定局
勝利は動かぬところとなった
袁福義は陳毅に次のように質問します。
“這次黄橋戦役,貴軍能有把握短日内定局?”
(訳)今回の黄橋の戦争では、あなたの軍隊は短期間で形勢を固める自信はおありですか?
これに対する陳毅の答えは、
“定局?定局?不,您的馬挿上翅膀,不就飛了。”
(訳)局面がきまったって?いやあなたの馬に羽を挿したら、飛べるのではないですか?
と定局の意味を、戦争ではなく今の自分たちの将棋の勝敗の意味に取り換え、とぼけます。
中国の囲碁界で初めて日本の九段に勝ち、その後の中国囲碁界をリードした陳祖徳が書いた《超越自我》の中で、囲碁用語がいろいろ出てきます。
● 妙着 miao4zhao1
【意味】妙手。巧妙な策略。
【用例】“点湖成棋”的妙着 湖を指して棋盤とするという妙手「着」はいろいろな発音がありますが、zhao1と発音する時は、囲碁、将棋の「一手」の意味となり、また比喩として、策略、手段の意味に使われます。
● 子 zi3 目 mu4
【意味】(囲碁の)目。「三目勝ち」という場合、“勝三子”という使い方をします。棋盤上の枡の交差で見る場合は「目」と言い、囲碁で勝敗を決める為、取った目の数を数えることを“点目”と言います
● 局 ju2
囲碁の盤。囲碁の試合の回数。ゲーム。そこから、形勢、状況の意味にも使われます。
・布局:囲碁の布石。そこから、物事の組み立ての意味に使われます。
「布」は駒を並べる意味で、“棋盤布好了”といえば、将棋盤を並べ終えた、将棋の盤の準備ができた、という意味です。
・開局:対局の最初の段階
・局勢:形勢
● 盤 pan2
(名詞)囲碁、将棋の盤 (量詞)試合を数える
・中盤 試合の中ほどの、勝敗の形勢を決める局面
・終盤 試合の最終局面
1980年代に、「一盤没有下完的棋(未完の対局)」という映画がありました。ここでの「盤」は量詞としての使用例です。
● 収官 shou1guan1
囲碁の試合の最後の段階で、空いた目を埋めていくこと。「官子」とも言う。
・単官:「収官」段階で、目数とは無関係な石を「単官」と言う。
私も囲碁は門外漢なので、それは知りませんでした。調べて正しく修正するようにします。
● 子 zi3 目 mu4
【意味】(囲碁の)目。「三目勝ち」という場合、“勝三子”という使い方をします。
それは、ちょっと「違うかな」と思います。
囲碁の中国ルールと日本ルールとの間に、少し微妙に異なります。自分は囲碁門外漢なので、詳細はわかりませんが、対局が終わり勝敗を計算する時は、中国が「数子(子(碁石)を数える)」で、対して日本は「点目」で勝敗を決めるようです。どういう計算法がわかりませんが、1子=2目になります。
つまり、三目勝ち=勝1又1/2子です。
ところで、現代の囲碁ルールでは、対局は必ずどちらかの半目勝ち、N目半勝ち(N=1,2,3…)或いは引き分け(めったに発生ない)で終わります。
子に換算すれば、勝1/4子・勝3/4子・勝N又1/4子・勝N又3/4子・引き分けのいずれで終わることになります。