中国語の文法上の間違い・パターン分類（3）

　文法上の間違いのパターンについて、3回目、最終回である。今回は、語順、及び文章の組み立ての間違いについて、見ていく。
　内容は、中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年から取り、理解しやすいよう、言葉を追加した。

（四）語順が不適当
1、修飾成分の位置、用途の間違い

①　中国手工藝品的出口，深受西方国家人民的喜愛。　
　この文の主語は“手工藝品”であって“出口”ではない。したがって、前半を“中国出口的手工藝品”に改めなければならない。
②　李紅等6名畢業生要求去山区当教師的申請公布后，在同学中強烈地引起了反響。　
　“強烈”は“反響”の定語、つまり連体修飾語であり、“引起”の状語、つまり連用修飾語ではない。したがって、この文の最後は、“在同学中引起了強烈的反響”とすべきである。状語でなく定語なので、“地”は“的”に変わる。
③　迎面吹来一股寒風，不禁使我打了個寒噤。　
　副詞“不禁”（～せずにはいられない）は状語（連用修飾語）で、“打了個寒噤”を修飾する。よって、後半の語順は、“使我不禁打了個寒噤”となる。
・打寒噤 da3han2jin1 身震いする

2、多層修飾成分の語順の不適当

①　批評和自我批評是有効的改正錯誤提高思想水平的方法。　
　“有効”は修飾する名詞の性質を表す定語（連体修飾語）で、“方法”を修飾する。この文では、“改正錯誤提高思想水平”とともに、二つの定語があるが、名詞“方法”との結びつきでは、“有効”の方がより緊密である。そのため、語順は、“改正錯誤提高思想水平的有効的方法”とするべきである。
②　一列火車轟轟隆隆地突然従東面開過来。　
　この文では、“轟轟隆隆地”、“突然”、“従東面”と謂語（述語）“開過来”を修飾する状語（連用修飾語）が三つ存在する。しかし、動作の時間の経過で見ると、“突然”→“従東面”→“轟轟隆隆地”となっているので、語順もその順番で並べるのが自然である。したがって、この文は語順を“突然従東面轟轟隆隆地開過来”と変えるべきである。

3、文のクローズ（Clause）の位置の顛倒

①　張教授的研究成果不僅在国際上処于領先地位，而且填補了国内這方面研究的空白。　
　この文の二つの前後二つのクローズは順を追って並べる関係であるべきで、国内→国際と並べるのが自然であり、順序がひっくり返っている。“不僅填補了国内這方面研究的空白，而且在国際上処于領先地位”とすべきである。
②　扑火救災過程中，経過3天英勇奮斗，戦士們置身火海，終于戦勝了大火。　
　この文の後ろの3つのクローズも、①例と同じく順を追って並べるべきであるが、「“置身火海”の活動を3日間続け、そして遂に勝利した」という話の経過であるから、真中の2つのクローズの語順が逆さまである。“戦士們置身火海，経過3天英勇奮斗，終于戦勝了大火”とすべきである。

（五）句の様式の混乱　
　同じ意味を、異なった様々な様式で表現することができるが、ことばをしっかり選ばないと、異なった表現方式がひとつの文の中で入り混じり、互いにからみつき、意味が不明確になる。
①　他創造性地豊富了嗩吶的表現力量是很可貴的。　
　この文では、前の句の後半部分を後ろの句のはじまりとしている。つまり、“他創造性地豊富了嗩吶的表現力量”という句の後半の“嗩吶的表現力量”を主語とした“嗩吶的表現力量是很可貴的”という句が存在し、そのふたつの句をひとつにつなげている。ところがそれにより、主述関係が不明確になってしまっている。これは、きっちり二つのクローズに分けた文章にすれば、意味が明確になる。つまり、後半のクローズに“嗩吶的表現力量”のことをいう代名詞“這”を追加し、“他創造性地豊富了嗩吶的表現力，這是很可貴的”とすれば、意味が明確になる。
②　登机時毎人可以随身携帯行李物品不得超過15公斤。　
　この例では、“行李物品”は“携帯”の賓語であると同時に“不得超過15公斤”の主語である。そのため、句の成分が互いに干渉し、意味が通じにくくなってしまっている。この場合、“携帯”と“行李”の間に“的”を加えることにより、“携帯”は“行李物品”の修飾成分となるので、文全体は主述構文となり、意味が通じやすくなる。

■　如何に文法上の誤りを見つけるか

　文法上の間違いの見つけ方については、以下の3つの方法を使うとよい。
1、語感から判断する　
　何回か読み返してみて、わかりにくい、或いは不自然な表現を修正する。
例：我們去九寨溝旅遊的時間還没有確定。
　ここで読んでみて不自然なのは、方向補語“起来”の使い方である。“起来”は下から上への動作、動作の始まりを表すが、ここで言いたいのは、時間がきっちり定まり終わることなので、“起来”ではなく“下来”がふさわしい。

2、簡略法　
　先ず、文章の基幹部分をチェックし、その後、枝葉の部分をチェックする。文章全体を見て、文の構造と内容を正確に把握したら、先ず主語、述語、賓語（目的語）の組合せに問題がないか、欠落や余分がないか確認する。その後、定語（連体修飾語）、状語（連用修飾語）、補語と中心語の間の組合せに問題がないか、欠落や余分がないか確認する。
例：建橋工人充分発揚了不怕苦、不怕累的精神和団結互助的友情。
　この文の修飾語を省略し、“工人発揚精神和友情”とすると、“発揚”と“精神”は組み合わせることができるが、“友情”は組み合わせることができないことが分かる。“友情”を例えば“風格”に改めればよい。

3、比較法　
　よく似た文型の文や句と比較し、誤りの有無を判断する方法。
例：出了名的陳銀儿最終従一個優秀企業家堕落成為行賄狂的罪人。
　この例で、“行賄狂的罪人”という言い方は正しいだろうか？似た表現で、“殺人狂的罪人”、“奪財狂的罪人”という言い方をするだろうか？これらの表現は間違っている。なぜなら、“行賄狂”には「罪を犯す」という意味が含まれており、“罪人”は余分であるからである。例えば“出了名的陳銀儿大肆行賄，最終従一個優秀企業家堕落成罪人。

■　誤りを修正する際の注意点　
　誤りを修正する際には、先ず文章の原義に忠実であるべきで、修正後も元の文の意味や表現を極力維持するべきである。また修正はできるだけ少なくし、文法上の間違いの修正だけにするべきである。誤りの修正の方法は一つにとどまらないことが多いが、修正を最少にするという原則を守るべきである。

【原文】中華書局《現代漢語》蘭賓漢、那向東主編2006年
　但し、日本語への翻訳と、内容の加筆、修正を加えてある。

　　　　　　　　　　　　　　　中国語の文法上の間違い・練習問題

　それでは、これまで3回にわたり、学習してきた、文法上の間違いの抽出、修正について、実際に練習問題を解いてみよう。今回は、問題を列記します。次回、この解答と、内容の解説をしたいと思います。

一、次の文には、実詞の使い方に誤りがある。誤りを指摘し、その理由を説明せよ。

①　他為人処事一向很原則，很認真。
②　現在一些人很注意包装自己。包装可以，但不能太包装。
③　除去行政楼外，几乎所有的窓子都明亮着不疲憊的眼。
④　実行新的管理制度以来，優質品率由過去的百分之八十提高到了百分之九十。
⑤　護膚品在使用過程中難免不受外界汚染，微生物很容易大量生長繁殖，導致変質。

二、次の文には、虚詞の使い方に誤りがある。誤りを指摘し、その理由を説明せよ。

①　我認為一個人生活的太順利了倒是一種不幸。
②　1980年5月18日上午，我国向太平洋預定海域発射的第一枚運載火箭獲得圓満成功。
③　歌曲或曲譜各選1名，各贈金卡1張，享受本企業各類優惠卡10年。
④　在改善学生生活上，我們学校採取了一些措施。
⑤　這種鈣片能使鈣迅速沈積于骨骼上，達到了真正的補鈣目的。

三、次の文は、ことばの組合せが適切でない。誤りを指摘し、その理由を説明せよ。

①　近几年来文壇非常活躍，小説、散文、詩歌的数量和質量都顕著地増加了。
②　節日的公園洋溢着一派生机勃勃、欣欣向栄的景象。
③　最稀奇古怪的軍備要数埃塞俄比亜人了。
④　陳明仁却対肖毅精湛的藝術和医療態度十分佩服。
⑤　他的煩悩憤懣之情，被山間明月和江山清風吹散了。

四、次の文にはことばの成分の欠如や余分がある。誤りを指摘し、その理由を説明せよ。

①　通過這些事実，使我們認識到進行愛国主義教育的重要性、必要性和迫切性。 ②　我国足球運動的落后状况在社会上引起了很大反響，如果還按照以往的訓練、管理模式，　這種現状恐怕難有根本性的改変。
③　来這里参観的人感慨万端，誰能想到，這緑茵茵的草場竟是寸草不生的荒漠！
④　江西廬山風景区名人別墅将于4月20日在北京人民大会堂進行拍売。
⑤　全校師生在英雄事跡的感召下，好人好事如雨后春笋般涌現出来。

五、次の文にはどのような誤りがあるか。誤りの内容を指摘し、修正せよ。

①　王廠長的模範作用激発了広大工人的労働熱情，産量一下子提高到百分之二十。
②　豊富而深厚的生活積累是我們能否創作出好的文学作品的关鍵問題。
③　太和豆豉相伝原産于江西省的太和鎮而得名。
④　3年前我們相遇的時候，那時他雖然已経満頭華髪了，却精神矍鑠，也很健談。
⑤　不管天気多麼冷，運動員們却能堅持訓練。
⑥　我們和農民一起，在山坡上昨天参加了植樹造林的緊張労働。
⑦　今天我們学習《詞的構成》這篇基礎知識短文的主要内容是合成詞的結構方式。
⑧　大家的不同的意見，主要集中在如何更徹底地改革陳規陋習。
⑨　這次会議対引進外資問題交流了広汎的経験。
⑩　在搶険防洪的戦斗中，経過4個多小時驚心動魄的同洪水搏斗，同志們奮不顧身跳進汹涌澎湃的激流，保住了大壩，戦勝了洪水。
⑪　我們做任何事情，都要対于人民負責。
⑫　打開收音机時，小華総喜歓選那些歓快、激動的楽曲聴。