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マーケティング研究 他社事例 776 「本当に経済回復の万策は尽きたのか?」 ~街のインフラを整備しない~

2021-03-23 14:43:15 | マーケティング
マーケティング研究 他社事例 776 「本当に経済回復の万策は尽きたのか?」 ~街のインフラを整備しない~


コロナ禍の急激な人口減まで予測していたわけではありませんが、愛知県豊田市は「街をこれ以上広げない事」を念頭に、再生・修復に動き始めた自治体です。

具体的には、水道事業ですが街の隅々まで100%水道網を張り巡らせる必要などもはやないと本気で考え始めています。

産業都市のイメージが強い豊田市ですが、2005年の合併で広い中山間地を抱え、実は市域の7割を森林が占めます。

これまではたとえ山の上でも、「給水」の申し込みがあれば断る事は出来ませんでした。

住民の要望に応える為に1000万円かけてわざわざ市で井戸を掘ったなど半ば苦い経験もしているのです。

そこまでコストをかける必要があるのかというのが、豊田市の将来を見据えた際の自問でした。

先ほどのようなケースが続けば早晩、破綻すると担当者の危機感は募ります。

水道事業はそもそも独立採算制、利用者から集めた料金で成り立っているからです。

もちろん住民がいるエリアへの給水は続けますが、例えば人のいない場所は給水の指定区域から外す、将来的には人の住まなくなった集落の水道管は撤去するなど、現実解を見据えて来年度から現地調査に入る事が決まっています。

道路でも水道でも、公共インフラは造りに造って、時がくれば補修や更新をします。

こんな旧来型のサイクルをいったん断ち、畳む・縮小するという選択にかじを切ってみようというのです。

京都府舞鶴市の取り組みはもう少し大胆で、「橋を壊していこう」という事のようです。

本当なの?と疑問に思いますが、本当のようです。

明治政府によって海軍鎮守府が置かれ近代化を遂げたこの街も、近年は年間約1,000人のペースで人口が減り、2019年には戦後初めて8万人を割り込みました。

5万人台まで落ち込むと予想される40年を念頭に、市では街の規模や機能を3分の2にしようと計画を進めているのです。

その具体化の筆頭が市道にかかる橋の撤去です。

これまでの5年間ですでに減らした橋の数は30か所程度にのぼります。

将来的には800以上ある橋を600程度にまで減らす計画を立てているのです。

無論、作業は丁寧に遂行し、う回路がごく近くにあるかなど必要性が低い橋のピックアップから始め、老いを見極めながら減らしています。

市の担当者は、「少なくとも50年がかりの仕事になるだろう」と語ります。

今年には撤去する橋を具体的に公表する予定ですが、住民の日常生活に近い政策だけに市民からは強い反発も予想されます。

これまでのケースでも住民向けの説明に1年以上を要するのがざらとの事です。

それでもなお、現時点で縮小の道筋を立てるのは、人口減少や財政状況がさらに行き詰まるのは目に見えていて、意見集約にかかる将来コストだけでも減らしておきたいというのが本音のようです。

このコロナ禍にあって、テレワークの浸透をにらみ、全国の自治体はこぞって都市部からの移住者を増やそうと助成金を打ち出していますが、こうした流れに、日本全体で減っていく人口を取り合っても意味がないと、冷ややかな視線を送る首長がいます。

愛知県東部の新城市の穂積市長です。

人口減の現実は新城市も例外ではなく、10年前に5万人だった人口は現在4万5000人を割り込みました。

2014年には、安倍政権下で日本創成会議が示した「消滅可能性都市」(増田ペーパー)に愛知県の市として唯一挙げられた街でもあります。

穂積市長の考えは「若者に出て行くなと言っても、都会が魅力的で出て行くのは仕方がない事。移住のために補助金を出しても効果は一時的だ。人口流出を深刻に捉えて囲い込む事に意味はない」とどこか達観しているようでもあります。

さらに「むしろ人口の流動性を高めて、外に出やすく、外から入ってきやすい地域を目指すほうが地域の力を高めることになる」と強調します。

穂積市長は急速に進む高齢化を巡っても前向きに捉え、高齢者は地域経済にとってプラスと考えているようです。

一般的に高齢化率が上がるほど、医療や介護などで若年層の負担が高まり、世代間のギャップや亀裂、分断が生じやすくなります。

しかし、高齢者が多い新城市のような地域にとっては、国が管理する年金という域外からの収入で成り立っていると言います。

実際に、年間の年金支給額は市の予算や市内企業の収入とほぼ同じ規模に上ると分かりました。

若者、若者と連呼してはやりの施策に手を出すより、高齢者がもっと街の活力になる方策を優先すべきではないかと考えています。

無論、高齢者に優しいだけの施策は打ちません。

むしろ逆で、市としては、公共施設の総面積を今後5~6年で30%削減する目標を掲げています。

そして昨年初めに、高齢者をはじめこれまで各種インフラを使ってきた人と、これから使おうであろう人の双方を交えて話し合う新たな場を設けました。

『何を削るべきか』『何がいらないか』をあぶりだす場になったようです。

今後は、激しい衝突が起こるかもしれませんが、住民自らで削るインフラを決めてもらう、それこそ派手さを欠いても地に足がついた政策と言えるのかもしれません。

穂積市長は、かつて道路が出来れば、公民館が出来れば我が町は潤うと少なくともそんな地方活性化の発想とは決別したのでした。

なにぶん、受け身になりやすい日本の地方自治体の場合、現実や近い将来の直視を避け、現状に甘んじたり、今のまま良い状態が続くと考えたりしがちでした。

ですから目の前で地方が壊れていく現実に直面した際、良い時にこそ悪いときの事も考える作業をしてこなかったツケが一気に回ってくるのです。

豊田市、舞鶴市、新城市の3市に共通して見えたのは『我が町の成長の限界をも覚悟し、布石を打つ姿』だったのではないでしょうか?

打てるべき手を打たないでいる時間的な余裕は、コロナ禍に入り、もうないのかもしれません。


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お問合せ https://www.fuudokaikaku.com/ホーム/お問い合わせ/

成長クリエイター 彩りプロジェクト 波田野 英嗣 

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