ファジアーノ岡山の魔境での16年間を振り返るシリーズ最終章です。
4回目の今回は遂にJ1昇格を果たす2024シーズンまでの4年間を「悲願達成編」としてまとめたいと思います。2009年のJ2参入の頃はとにかく弱かったファジが少しずつプロサッカーチームとしての形を整えられるようになり、J1昇格を目標として活動するように成長していることを感じてはいましたが、それを現実的に受け止められる目標に変わったのはこの頃からです。
『魔境脱出マニュアル』なる謎の本まで出版されるほどJ2の底なし沼は混沌としていました。J1にいたクラブも次々にJ3に降格するような厳しく、難しい、そして誠に面白い2部リーグになっていました。
コロナ禍を引きずっている時期は昇格プレーオフが開催されず、昇格するクラブは2つに限定され、2020年の「降格なし」という特別ルールの歪みから4クラブが降格するという2021年はその混迷ぶりが頂点に達した年と思います。J1参入プレーオフが復活するのは2022年になってからで、コロナを引きずった2年間はチームもリーグも閉塞感の中でもがく時期でもありました。
2016シーズンにJ1昇格プレーオフの決勝に進出し、J1昇格まであと1勝まで迫ったファジでしたが、それ以降J1昇格を果たす2024年までに更に8年の長い時間を要することになります。J2の22チーム(2024年から20チーム)の半数がJ1からの降格チームで占められるようになり、昇格するには実に難しく、一つ間違ってリズムを崩せばJ3に降格してしまう恐怖の魔境と化して来ました。
2021年はコロナがまだ猛威を振るっているという風評の中でリーグを開催し、緊急事態宣言が出された時期には又しても理不尽な無観客試合を強いられることになり、クラブ経営にも暗雲が漂っていた時期です。結局、このシーズンは最終節まで入場者数を満席にすることができず、収入面でも苦しんだ暗黒期を引きずります。ある意味、これは風評被害のようなもので、その為にクラブ経営が揺らぐようなことはあってはならないことでした。全くCOVID-19という代物は得体の知れないままで今日に至り、誰もその姿を発表すらしない不可思議なウイルスですよね。まあ、どこにもいないから謎のままなのでしょうが・・。
またしても、変な方向に脱線したので元に戻します。
では、2021シーズンから振り返ります。
【2021シーズン】
コロナ禍でチーム状態も最低まで落ち込んだ2020シーズンを終えた時、個人的には「上門、徳元、白井の3選手を何としても残留させてくれ」と思いました。クラブの可能性を広げてくれるこの3人が強化に不可欠と思えたからです。大きな補強ができないままに、有馬監督3年目の2021シーズンに突入しました。
前年のJ2で首位に立った徳島ヴォルティスと2位のアビスパ福岡がJ1に昇格し、J3からはブラウブリッツ秋田とSC相模原がJ2に昇格して来ました。特例で降格チームが出なかったことから、J1が20チームに増え、J2は22チームのままでしたが、その分J3が2チーム減でシーズンが始まりました。
このシーズンのファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りになりました。
15勝14分13敗 勝点 59 得失点差 +4
前半はチーム状態が上がらず苦しみましたが、夏場の休止期間にミッチェル・デュークや石毛などの獲得に成功したチームは、後半戦は10勝8分3敗と盛り返しました。10月以降の戦いぶりはJ1昇格を目指すチームに見劣りすることのないような強さを見せました。ただ、このシーズンの一つの問題点が年間を通してホームで6勝しかできなかったことです。結局、このホームでの低迷が響いて年間順位は11位で終わりました。このシーズン限りで有馬監督が退任、新たなシーズンからは木山監督が采配を振るうことになりました。
【2022シーズン】
2021シーズンにチームの中心として出色の活躍を見せた上門がセレッソ大阪に移籍、白井は徳島ヴォルティスへ移籍しました。パウリーニョやイヨンジェもチームを去りました。CBの中心を担った井上は京都サンガF.C.に抜け、もう一人の安部は徳島へ戻りました。木山監督体制初年度は、ヨルディ・バイス、チアゴアウベスらを獲得、柳が栃木から加入、本山が関学から、田中が早大から入団し、米子北の佐野もこの年に入団しました。大型補強の裏には、上門と井上の移籍金があったと思っています。
2020シーズンの特例の裏返しで、J1からは横浜FC、ベガルタ仙台、大分トリニータ、徳島ヴォルティスの4チームが降格、J2からJ3へもSC相模原、愛媛FC、ギラヴァンツ北九州、松本山雅FCの4クラブが降格しました。前年J2優勝のジュビロ磐田、2位の京都サンガF.C.の2チームがJ1昇格を果たし、J3からはロアッソ熊本といわてグルージャ盛岡の2クラブがJ2に昇格しました。
ファジは開幕戦のヴァンフォーレ甲府戦を「4-1」で制して幸先良いスタートを切りますが、その後は勝ち切れない試合が続きます。GKの梅田の長期離脱の影響もあって中々チーム状態が上向きませんでした。そんな中で「1-0」で勝利したモンテディオ山形戦がJリーグ始まって以来の再開試合になるという逆風で1勝が取り消されるなどの不運にも見舞われました。それでも6月以降は少しずつチーム噛み合うようになり、順位も上がって行きました。夏場から秋にかけてコロナ集団感染などに見舞われることもありましたが、チームは勝利を重ねて、8月31日の山形との再開試合に勝利するとさらに勢いを増して3位に浮上し自動昇格を視野に入れる位置にまで上がって行きました。しかし、10月に入ってツエーゲン金沢戦、ブラウブリッツ秋田戦に敗れ自動昇格の望みを絶たれました。最終節の東京ヴェルディ戦にも完売して嫌な雰囲気が漂う中で3位でリーグ戦を終えました。
このシーズンのファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
20勝12分10敗 勝点 72 得失点差 +19
3位で進んだJ1参入プレーオフ1回戦は6位のモンテディオ山形とシティライトスタジアムで対戦することとなりました。リーグ戦は再開試合を含めて3勝していた相手との対戦に妙な因縁を感じたこと、リーグ戦終盤にファジの大きな失速が見られたことなど嫌な予感がどんどん大きくなった中でプレーオフ初戦を迎えます。試合は「0-3」の完敗。チーム2度目のプレーオフも敗退しJ1昇格は果たせませんでした。
2022年シーズン限りで、チームのレジェンドの1人喜山が退団、王子と呼ばれた関戸は引退してカレー店を経営する道を選びました。また、左サイドの徳元はFC東京へと移籍することとなりました。ミッチェル・デュークもFC町田ゼルビアへ移籍しました。
J1参入プレーオフを勝ち進んだロアッソ熊本はJ1で16位だった京都との入替戦に引き分け、J1昇格を阻まれました。
【2023シーズン】
木山監督2年目のシーズンは各チームから若い選手を積極的に補強して臨みました。
J1へは前年J2首位のアルビレックス新潟と2位の横浜FCが昇格、J1からは清水エスパルスとジュビロ磐田が降格し、静岡県にJ1クラブがいなくなる事態になりました。J3に降格したFC琉球といわてグルージャ盛岡と入れ替わりに、いわきFCと藤枝MYFCの2チームがJ2に初昇格しました。
このシーズンのファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
13勝19分10敗 勝点 58 得失点差 ±0
春先、負けないけど勝てないドローゲームが長く続き、調子が上向かず苦しみます。特にアウェーゲームは5勝12分4敗とドローが続き、最終的にプレーオフ圏内からも脱落し、年間10位でシーズンを終えました。
チームは若さを露呈し勝ち切れない未熟さで勝点を思うように積み上げられず、8月後半から9月前半にかけての4連勝で上向きましたが、磐田戦に勝利した後、ジェフユナイテッド千葉に「0-5」の大敗、その後は引き分け試合が続くことになって順位をズルズル落としてプレーオフを逃しました。
2023シーズンからJ1昇格プレーオフのレギュレーションに戻り、J2優勝のFC町田ゼルビアと2位のジュビロ磐田が自動昇格、J1昇格プレーオフを制した東京ヴェルディがJ1昇格を決めました。J2最下位となったツエーゲン金沢と21位の大宮アルディージャがJ3に降格。大宮は元J1クラブで3チーム目のJ3降格となりました。
【2024シーズン】
木山監督3年目となった今季、竹内を清水エスパルスから、藤田をモンテディオ山形から獲得します。更にいわきFCから岩渕、アルビレックス新潟から田上を獲得するなど、各チームの中堅、ベテラン選手を補強することでチームに安定感を呼ぼうという意図が感じられました。また、ブローダーセンやグレイソン、ガブリエル・シャビエルなど、外国人選手を積極的に補強して昇格に向けてのチームのやる気を感じさせました。
J1が18チームから20チームに増枠され、J2が22チームから20チームに減少、J1からJ3までの各カテゴリーが20チームずつに揃うことになりました。
J1へFC町田ゼルビア、ジュビロ磐田、東京ヴェルディの3クラブが昇格し、J1から降格してきたのは横浜FCの1チームだけということになりました。つまり、今季はJ1昇格する為には一番の可能性があり、今季を逃すとまた暗く長い魔境のトンネルに入ってしまう恐れがあったのです。J3からは愛媛FCと鹿児島ユナイテッドFCが昇格してきて、入れ替わりにツエーゲン金沢と大宮アルディージャが降格しました。
2月の開幕から3月いっぱい負けなしで4連勝を含む5勝2分でロケットスタートを切ります。しかし、横浜FC戦にホームの雨中戦で「1-3」の完敗、そこからは勝ったり負けたりを繰り返しながらの戦いとなりました。年間を通して6位以下に落ちなかったシーズンは7月の仙台戦勝利から勝てなくなり、5試合連続でドロー、すっかり魔境の底なし沼にはまり込みかけていました。8月末のレノファ山口戦に負けると6位から滑り落ちる瀬戸際となりましたが、故障から復活したルカオの2ゴールで快勝、息を吹き返したチームはブラウブリッツ秋田に敗れるものの、愛媛FCにホームで快勝、水戸ホーリーホックとのアウェーゲームは完全な負け試合をブローダーセンのスーパーセーブで引き分け、3位のV・ファーレン長崎にルカオの一撃で勝利するなど復活の気配を見せました。10月はアウェーでヴァンフォーレ甲府に完敗、この時点でプレーオフ争いが勝点差「1」で3チームが競り合う展開に突入することになりました。そこからファジは、いわきFCに岩渕の2ゴールで競り勝ち、当時首位に立っていた横浜FCには「4-2」で快勝、3チームが勝点差「1」の状況のまま、リーグ戦残り2試合になりました。ホームの藤枝MYFC戦には「2-0」で勝ち、ジェフユナイテッド千葉とベガルタ仙台の敗戦に伴い、ファジのプレーオフ進出が決定しました。最終節の鹿児島ユナイテッドFC戦に引き分けたことからリーグ戦は5位でプレーオフを戦うことになりました。
このシーズンのファジアーノ岡山の年間成績は以下の通りです。
17勝14分7敗 勝点 65 得失点差 +19
リーグ戦を通じての失点数は「29」で横浜FCの「27」に次いで2位、年間のクリーンシートは20試合でJ2トップとなりました。この守備の固さでフレーオフに挑むこととなったのです。
J1昇格プレーオフの準決勝はまたしても因縁浅からぬモンテディオ山形とのアウェーゲームとなりました。この試合は立ち上がりからファジの攻勢が目立ち前半で「2-0」とリード、後半は相手の一発退場で数的優位となり更に1点を追加して「3-0」で山形を撃破。V・ファーレン長崎を破ったベガルタ仙台とシティライトスタジアムでむ決勝を戦うこととなりました。
決勝はご存知の通り「2-0」。末吉と本山のゴール、ブローダーセンのスーパーセーブも飛び出して快勝。遂に悲願のJ1昇格をホームで決めました。
魔境生活の16年を4年ずつ4回に分けて振り返って来ました。J2参入から16年かけてのJ1昇格はサガン鳥栖の13年を上回って史上最も遅い記録となりました。この記録を破るとしたら現状では水戸ホーリーホック以外に可能性はなく、予想としては当分破られることはないと思われます。
このスロー出世でやっと辿り着いたJ1でファジアーノ岡山がどんな戦いを見せてくれるのか? 厳しい世界でおいそれと勝てることはないでしょう。負けが込むことも想定されます。それでも、J1で戦う経験を積むことはクラブにとって大きな財産になります。不安や恐れよりも楽しみな気持ちが上回った状態で開幕を迎えられたら良いですね。
本山、田中、堀田など一緒に昇格までを戦った選手たちとの別れもあります。これはプロの世界なので有り得ることで避けては通れません。新戦力をどこまで獲得できるかは未知数の部分もあります。
「全員で勝つ!」をスローガンにJ1昇格プレーオフを果敢に戦ったファジ戦士たち、それを後押しするべく全員で力いっぱい応援したサポーターの皆さん、岡山が全員で勝ちとったJ1昇格を更に実り大きなものとするために今後も頑張って行きましょう。
2025シーズン開幕はあと1ヶ月と少しです。J1でも全員で勝ちましょう。
よろしくお願い申し上げます。
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