(「河北新報」令和6年11月21日付け記事より引用)
デザイン事業を手がけるクオリティー(埼玉県越谷市)は仙台市若林区で福祉事業所を運営し、障害のある利用者が描いた絵画を自社のアパレル商品のデザインに取り入れている。障害者の社会参画を支援するとともに、アーティストとして経験を積んだ利用者が、一般企業に就職するキャリアパスの確立も目指す。
社会参画や就職後押し
クオリティーは今年4月、若林区伊在1丁目に就労継続支援B型事業所「アトリエ・アンノウンⅣ仙台」を開設した。知的障害や精神障害のある10~50代の8人が通い、風景や動物、植物などを描いている。
絵画作品を自社ブランド「アンノウン」のデザインの原画として採用し、衣料品などをオンラインショップを中心に販売する。売り上げの一部を利用者の工賃に充て、平日の午前9時~午後4時に通常通り作業した場合は最低月2万円を保証する。
絵画作品の商品化は、利用者の創作意欲を高めるきっかけにもなっている。
仙台市泉区の大松沢玄聖(げんせい)さん(21)は「自分が描いたヒョウの作品がバッグのデザインに採用された時は、努力が認められてうれしかった。見た人が元気になるような絵を描きたい」と話す。
クオリティーは2020年に埼玉県内で同様の福祉事業所を開設し、現在は同県内で3カ所を運営する。埼玉と仙台の計約80人の作品を基に年2回、シーズンコレクションとして、アウターや帽子などを約100点ずつ売り出している。
ブランド「アンノウン」は、証券業界出身の沢本義一社長(47)が18年、旧知のデザイナーと創設した。特別支援学校の保護者らから「卒業後に働く場が少ない」という声を聞き、就労の場を確保しようと考えたのが、きっかけだった。
それから6年。福祉事業所の利用者の中に、一般企業への就職が内定したケースが出てきた。埼玉県内の事業所で4年間経験を積んだ1人が来年4月、デザイン系の企業に就職することになった。仙台の事業所でも利用者の希望に応じ、一般企業への就職をあっせんすることにしている。
沢本社長は「障害者だからこれしかできないと決めつけるのではなく、健常者と同様に、個人の特性を生かせる就労機会を増やすことを目指していきたい」と力を込める。