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「植木の里 安行」 花と緑の振興センターと樹里安

2012年10月06日 19時54分05秒 | 盆栽・桜・花・木・緑・動物
「植木の里 安行」 花と緑の振興センターと樹里安 川口市

安行を訪ねる際、立ち寄りたくなるのが、埼玉県の「花と緑の振興センター」である。昔から植物園歩きが好きなので、約2千種5千本の樹木のあるこの展示園は、どの季節に来ても面白い。興禅院のすぐ近くだ。

1953(昭和28)年、「県植物見本園」として開園、2003(平成15)年に「植物振興センター」から現在の名前に変わった。

園内は、「花木園」「コニファー(針葉樹)園」「カラーリーフ(紅葉)園」などに別かれ、最も有名な梅園をはじめ、ツバキ・サザンカ、ツツジ、サクラソウ、ハーブなど各種の花が楽しめる。

ホームページを見ると、ツバキ・サザンカ450種、サクラソウ300種、ハーブ40種とあり、名前と写真がついているので花の名を同定するのに役立つ。サクラも見たこともない珍しいものもある。次々眺めているだけでうれしくなる。

ホームページには、その月の見どころや園内の見頃情報も載っているので、出かける前にチェックできる。

「道の駅 川口・あんぎょう」を併設している「川口緑化センター」も見逃せない。1996(平成8)年に緑化産業の拠点としてオープン、「樹里安(ジュリアン)」というバタくさい名前がついている。(写真)

10月初めの3連休には「安行花植木まつり」が開かれ、庭木、苗木、鉢物、草花などが展示販売される。園芸資材も展示即売するほか、専門家による園芸相談もある。

盆栽展も同時に開かれ、女性や外国人の姿も増えてきた。夏には「アサガオ・ほおずき市」が開かれ、風物詩になろうとしている。

学会も開かれる。08(平成20)年11月のシーズンには、「国際もみじシンポジウムinジャパン」があった。もみじの研究成果の発表や品種展示などが実施され、国内外から多くの関係者が参加した。

安行の植木の伝統技術の一つに「根巻き」がある。樹木を移植する際、根についている土が落ちないようわらや縄で巻く技術である。安行の根巻きは、縄の造形美が特徴で、仕上がりが美しいのが誇り。その根巻き技術の講習会も開かれた。

安行にはこのほか、「安行流」という仕立物の技術、「ふかし」という花の開花を早める技術など長い伝統が培った技術が生きている。

このセンターでは、「樹里安だより」という美しいカラーの広報誌などを出している。技術の話は、その中の一冊「植木の里 川口安行 緑化産業の概要」というパンフレットに書いてあった。

訪ねる度に新しいのが出ていないかと探すのがくせになった。この安行シリーズを書くのにも歴史や数字などいろいろ引用させて頂いた。

このパンフレットの「安行植木の歴史」によると、1982(昭和57)年、オランダのアムステルダムで開催された花の万博フロリアード(国際園芸博物会)に、日本を代表して川口市から植木5千本、苗木、盆栽などを出品、日本庭園が最高賞を獲得、安行の名を世界に知らしめた。

安行の植木のそもそもの起源は、390年前の1618(元和4)年、安行の赤山に城を構えた関東郡代第3代伊奈半十郎忠治が、植木や花の栽培を奨励したのが始まりという。

第二次大戦中は、陸稲や麦、甘藷などの畑に転換され、8件の農家と母樹園5haが残っただけで、壊滅状態になった。

1950(昭和25)年頃、朝鮮戦争の特需景気で、植木の生産が本格的に再開され、1960(同35)~1973(同48)年には、今度は高度経済成長の波に乗り、未曾有の緑化ブームが到来、需要が飛躍的に拡大した。

植木産業が景気に大きく左右されることがよく分かる。

10年から川口市造園協会が中心になって造園業者が作った庭や苗圃(びょうほ=植木の畑)を公開する「安行オープンガーデン」も、「安行花植木まつり」に合わせて始まった。この時に訪れれば、安行の全貌が分かる。