海外の赴任地が、三か所ともいずれも英国の元植民地で、必ず植物園があった。それが植物に親しむきっかけで、「さすが英国は世界のプラント・ハンターの発祥地だけある」と感心したものだ。
越谷市に植物園があると知ったのは、海外から帰って間もない頃で、「埼玉県にも植物園があるのか」と驚いた。
当時、「アリタキ・アーボレータム」と呼ばれていたこの園は、越谷高校の元教諭で植物学者だった有瀧龍雄氏が収集したもので、その名を冠している。「アーボレータム」とは植物園のこと。
01年に没後、02年に市に寄贈され、10年10月1日、「越谷アリタキ植物園」の名で開園した。新聞で知り、さっそく出かけてみると、きれいに整備されて、こじんまりした緑の空間が生まれていた。面積約7200平方m。
動物園や水族館を好きな人は多くても、植物園が好きという人は少ない。この園は、世界の珍しい植物を集めているのではなく、暖温帯性の樹木、つまり日本ではおなじみの木を中心に収集いているので、親しみのあるものが多い。
ていねいに木ごとにその名前が付いているのがうれしい。里山を一緒に歩いていても、杉と檜の区別さえつかない人が少なからずいる。それにサワラを加えると、「降参」というのが実情だからだ。
日本は俳句愛好者だらけ。最低百万から最高1千万人の間とも言われているのに、この3つの区別がつかないようでは観察に基づくはずの「写実」が泣く。
朝日新聞の埼玉版によると、ここには地元の「埼玉県東武自然観察会」の調査で、約300種、約1200本の樹木と約130種の草本類(草)があるという。
幹の周囲が約4.2mと大きい中国原産の巨樹シナサワグルミは二股で、入り口に大きくそびえているし(写真)、呼吸根を地上に出すのが特徴の北米原産のラクウショウもある。通路の中央部にはツバキ通りがあり、多くの種類が植わっている。季節には楽しみだ。
素晴らしいのはその所在地である。フジで有名な久伊豆神社の参道に面する。有瀧さんの父親が1898年(明治31年)に庭園として整備したものだとか。東武伊勢崎線越谷駅から約1.7kmで徒歩約20分。
一帯は市の「環境保全区域」に指定されていて、近くの元荒川沿いを散歩するのも楽しい。
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