ほんとに久しぶりで「映画館」で映画を見た。
学生時代は映画キチで映画評論家を目指していた。昼夜6本を見ることも珍しくなかった。白黒時代のフランス映画から、当時はやりの次郎長ものまで映画は手当たりしだいに見た。
「映像万年筆論」などという迷論にだまされて、本さえ読まず映画に没頭した
その反省もあって、最近は、テレビで古い名画をたまに見るだけだ。
それでもなぜ映画館まで足を運んだのか
「のぼうの城」のためである。その映画の舞台になった行田市の古墳群や古代ハス池も何度も訪ね、背景については百も承知だ。
そこへ来たのが
「堂々! 2週連続・第1位! 」「空前絶後のとんでもない《大逆転》に驚き笑う! 興奮と感動の劇場内、これを見ないと今年は終わらん! 」
という朝日新聞の広告である・
「戦国最後の大合戦、驚愕の実話!200万部を越える大ベストセラー映画化! 」とも付記してある。
最近、小説にも興味がないので、読んではいない。「それほどならば」と、重い腰を上げた。
浦和駅前のコルソ内のユナイテッド・シネマ浦和。60歳以上の老人は1800円のところを1000円で見られると聞いて驚く。
昔、ションベンの匂いのする三本立て映画館に慣れていたので、座席も素晴らしく、座席が階段状に並んでいるのにも驚く。
ウイークデーの昼間だったので、ガラガラかと思っていたら、老人が仲間連れで来る姿が多く、真ん中の席は埋まっていた。
約2時間半、紙芝居的な面白さは十分で、観客は終わって、配役の名前が流れても席を立たない。
全国公開から3日間で観客動員数41万人弱、興行収入5億円余、埼玉県内20の映画館では、知事を初め、県人口比6%を上回る約12%にあたる約5万人が観賞したという数字がうなずける。
観客動員数ランキングでは、1位が地元「ワーナーマイカルシネマズ羽生」、2位が「熊谷シネティアラ21」だったという。5位にはさいたま市の各シネコン(複合映画館)が入ったという。
「ぶぎん地域経済研究所」は12月中旬、この映画の公開に伴う県内への経済波及効果を約38億円とはじいた。
筋書きは、忍(おし)城に石田光成の大軍2万が攻め込み、水攻めにめげず、「のぼうさま」と呼ばれる臨時城代・成田長親(ながちか)が奮戦するというもの。
開城のはずだったのに、戦いの発端は、交渉に来た使者のなめきった傲慢な態度に対する反発だった。
北条氏の小田原城の支城の中で、最後までただ一つ開城しなかった忍城への共感がこれだけの県内の観客を動員したのだろう。
日頃「ださいたま」と呼ばれている埼玉県民の屈折した感情が背景にある。
映画は斜陽といわれて久しい。しかし、年々増える老人たちを惹きつけるテーマを持つものなら、たとえローカルなものでもまだまだ頑張れると、テレビにはない素晴らしい音響を聞きながら思った。
研究所によると、週末に大型バスが訪れるなど、観光客が増えているほか、関連グッズや土産物の売れ行きは公開前に比べ5~10倍になっているという。
人口減少率が非常に高い行田市の活性化の起爆剤になることを期待したい。この映画には行田市民のそんな願いが込められている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます