「植木の安行」として知られる川口市の安行の中でも、「小林もみじ園」は特異な存在である。
「東京外環自動車道」の南沿いの安行領家にあり、すぐ近くに「県花と緑の振興センター」、「興禅院」がある。
国内でも数少ないもみじ専門の植木屋で、販売が専門ながら、シーズンには観光客が続々訪れる。“もみじの植物園”といった感じだ。
なにしろ3000坪の敷地に原種、園芸品種合わせて400種類もあるのだから。
15年12月1日に久しぶりに訪ねてみると、園主の小林和治さんが「暖冬で今年はメチャメチャ。冷え込みが必要なのに、冷え込んだのは最近の数日だけ。払い落としたいぐらいだ」とぼやいていた。
いつもの年ならシーズンは11月から12月中旬ごろまで。この季節には、赤を中心に各種のもみじの葉が鮮やかに輝いているはずなのに、早くも枯葉に変わり、落葉寸前の状態だった。
「紅葉狩り」というより、イブ・モンタンのシャンソン「枯葉」を口ずさみたくなるような雰囲気だ。「もみじまつり」ののぼりが可愛そうなくらいだった。(写真)
3日の朝日新聞の「天声人語」にはたまたま、「最低気温が8度以下になると色づき始め、5,6度で一気に進む」と書いてあった。
「10度くらいで2週間から20日冷えないと紅葉しない」と書いてあるものもある。
新聞に、「暖冬で冬物の売れ行きが悪く、百貨店の売れ行きが落ち込んでいる」と書いてあったのを思い出し、初めて暖冬を実感した。
「もみじにも色々あるものだ」と、その奥深さを知ったのは、数年前このもみじ園に来たときだった。
木の葉が色づくのは、葉の老化作用で、紅葉は緑色のクロロフィルが分解して赤色のアントシアニンが増えるため。黄葉は黄色のカロチノイドが増えるためだ。褐葉もあるが、タンニン状の物質などが目立ってくるかららしい。
紅、黄、褐葉は、木の葉の色の違いである。葉の形状が、イロハモミジのように切れ込みが深く人の手に似たものはモミジ、トウカエデのようにカエルの手のように切れ込みが浅いのはカエデという分け方もある。
紅葉で切れ込みが深い代表がイロハモミジである。
モミジはカエデの仲間も含めて総称として使われていることが多い。だが面白いのは、植物分類学上ではモミジという科も属もないことである。正式には「カエデ科カエデ属」だ。
だが、園芸や盆栽の世界では、「葉の切れ込みが多く、深いもの」はモミジ(紅葉)、「切れ込みの浅いもの」はカエデ(楓)と明確に区別されているから、まぎらわしい。
モミジは高木になるが、木の形状から「シダレモミジ」もあるらしい。
尾瀬ヶ原で有名な、草や低木の葉の色が変わる「草紅葉」もある。
盲点になっているのは、ゴールデンウイークとその前後の「春紅葉」である。美しさは「秋紅葉」にひけをとらないという。
今度の「紅葉狩り」は、秋ではなく「春紅葉」の季節に来てみよう。
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