新古今和歌集の部屋

新古今増抄 巻第一 西行 清瀧川 蔵書

増抄云。くらしは來るらし也。夕月夜の比塩みち

くるとなり。おほくみちぬゆへに、芦のわか葉の

またみじかきを、潮こゆる程なり。大しほなれば

わか葉もみえぬなり。心をつくべし。たゞ夕月

夜とはをかぬなり。しづみはてぬ景氣なるべし。

一 春の哥とて    西行法し

一 ふりつみし高ねのみ雪解にけり清瀧川の水のしらなみ

古抄云。清瀧は愛宕高雄のふもとなり。此哥

高根のみゆきとけにけりといえる先きどく也。

同じ事なれども、爰にてきえにけりといはゞ

よはかるべし。所によりてつよき詞を置て

よき事もあり。又よはきを置てよき所


も有べし。かやうの心づかひ簡要なり。高根

のみゆきは、つよき詞なり。それによりて、

又とけにえりとつよくをかれたり。上下かけあはぬは

龍頭蛇尾の病といひてきらふ也。清瀧にと

取出して、結句に白波といへる賢作也。其故は

春のきたりて、雪のきゆる時分は、いかなる清水

もにごるものなり。清瀧川は水のなかるゝを

みて、さてはたかねの雪も、みぎはの氷も漸

くとけゆくよとさとりしれる心也。眼前の体也。


鎌倉のみこしがたけの雪消て 此哥を取て

順徳院御製に ちくま川春行水は澄に

けり消ていくかの峯の白雪。定家卿此御製

を、西行の歌よりも、たちまさりたるやうに申され

たるとなり。上人この哥は、澄といふ字読あま

したる哥と難ぜられたりといひつたへたり。

増抄云。降つみしは、冬の雪なり。過去のし

文字なり波にて雪のとけたるをしる作なり。

人丸。龍田川紅葉ゝながる神南のみむろの山に

しぐれふるらし。とあるは紅葉をみて、これはしぐ

れのふりて染たらんとの作とおなじ心也。

なみでみねの雪の澄をしり、落葉でしぐれ

のふるをしるなり。

 

頭注

清瀧大井川かつら

川鳥羽川ひとつ

ながれなり。所によ

りて名が替る也。

 

※※古抄 幽斎新古今聞書増補。ただし若干差異がある。



※鎌倉の
堀河院御時百首和歌
              源顕仲
鎌倉や見越が岳に雪消えてみなの瀬川に水まさるなり

※ちくま川
風雅集春歌上
              順徳院
筑摩川春行く水は澄みにけり消えていくかの峰の白雪

※龍田川
古今集秋歌下
 題しらず 又は、あすかがはもみぢばながる 此歌右注人丸歌、他本同
よみ人しらず(一説、人丸)
たつた河もみぢば流る神なびのみむろの山に時雨ふるらし

 

春歌上 清滝川 - 新古今和歌集の部屋

春歌上 清滝川 - 新古今和歌集の部屋

春歌とて西行法師降りつみし高嶺のみ雪解けにけり清滝川の水のしらなみ読み:ふりつみしたかねのみゆきとけにけりきよたきがわのみずのしらなみ春歌上清滝川

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