源氏物語 梅枝 第二章第七段
今日はまた、手のことどものたまひ暮らし、さまざまの継紙の本ども選り出でさせたまへるついでに、御子の侍従して宮にさぶらふ本ども取りに遣はす。嵯峨の帝の古万葉集を選び書かせたまへる四巻、延喜の帝の古今和歌集を、唐の浅縹(あさはなだ)の紙を継ぎて同じ色の濃き紋の綺の表紙、同じき玉の軸、緞の唐組の紐など、なまめかしうて、巻ごとに御手の筋を変へつついみじう書き尽くさせたまへる、大殿油短く参りて御覧ずるに、
尽きせぬものかな。このころの人は、ただかたそばをけしきばむにこそありけれ
など、めでたまふ。やがてこれはとどめたてまつりたまふ。
はなだ‐いろ【×縹色】 薄い藍 (あい) 色。浅葱 (あさぎ) と藍の中間くらいの色。花色。