兼載雑談
一、歌合中書之樣、兼日の懷紙を、たとへば、
春曙 定家
春の夜の夢のうきはしとだえして
峯にわかるるよこ雲の空
一首にても二首にても如此書くは立紙なるべし。兼日をも、
紙を二つにおしをりて書けるもあり。たとえば、
湖上朝霞 定家
あさぼらけみるめなぎさの
やへがすみえやはふきとく
しがのうらかぜ
二行七字なり。當座の中書は、大概かくのごとく、紙をお
し折りて二行七字に書くべし。當座短冊など自然うしなふ事ありとも、題を我から書く事、努々不可有也。
一、一首懷紙は、三行三字なり。二首三首は二行七字なり。
五首七首は一紙に二行づゝなり。十首より上は紙を續ぐべ
し。和歌の會席の作法、別紙に細注之。此道の奥義なり。
※春の夜の
新古今和歌集巻第一 春歌上
※あさぼらけ
藤河五百首