兼載雑談
、彷彿千聲一度飛。此の詩の心は、一度とは一聲飛びな
がら鳴きたるも、斷腸の心は千聲といへり。此の詩に、西
行のなかずともこゝをせにせむのうたを、後鳥羽院あは
せ給へり。此の歌もたゞの所にて千聲鳴きたるよりも、爰
にてなかぬは感のまさるとなり。
一、 ゆきやらで山路くらしつ時鳥今ひと聲のきかまほしさに
この心は、一聲や
きかむとて、今鳴きたる跡をさらで暮したるとなり。二聲
ときかずは出でじとあるうたも、此の歌などの心なり。宗
尊親王の歌に、
ゆきやらで山路くらせる時鳥今一こゑは月に鳴くなり
前の本意を、一重上をあそばしたり。人のこゝろざしを感
じて後、今一聲をばけつこうして月に鳴きたるなり。
※彷彿千聲一度飛
香山館聽子規 香山館に子規を聴く
竇常
楚塞餘春聽漸稀 楚塞の余春聴くこと漸く稀なり
楚塞餘春聽漸稀 楚塞の余春聴くこと漸く稀なり
斷猿今夕譲沾衣 断猿今夕衣を沾すことを譲る
雲埋老樹空山裏 雲は老樹を埋む空山の裏
彷彿千聲一度飛 彷彿たり千声一度に飛ぶに
雲埋老樹空山裏 雲は老樹を埋む空山の裏
彷彿千聲一度飛 彷彿たり千声一度に飛ぶに
※なかずとも
新古今和歌集巻第三 夏歌
聞かずともここをせにせむほととぎす山田の原の杉のむら立
※ゆきやらで
拾遺集
北宮の裳着の屏風に
源公忠
和漢朗詠集
公任三十六人撰
俊成三十六人歌合
※ゆきやらで暮らせる山の
続古今
山路郭公といふことを