新古今和歌集の部屋

謡曲 梅枝

梅   枝

                            四番目物・執心女物 作者不明

身延山僧が行脚の途中、摂津の住吉の浦でにわか雨に会い、庵に宿を求め、室内に舞楽の太鼓、衣装があるの不思議に思い、女主人に尋ねると、昔天王寺の伶人浅間と住吉の伶人富士が内裏で管弦の役を争い、富士が太鼓を賜った事を恨んだ浅間は、富士を殺害した。富士の妻は嘆き悲しみ、太鼓を打って慰めていたが、その妻も死んでしまったと語り、弔いを勧める。僧は妻の縁者かと尋ねると、遠い昔の物語だと答え、恋慕の執心の深いことを告げ、執心救済を頼んで消えた。里の男が僧の問いに答え、萩原の院の時に起こった浅間と富士の芸道遺恨による殺人事件を語り、富士夫妻の回向を勧める。その夜女人成仏を約束する法華経を一心に手向けると、
舞台の衣装を着けた妻の霊が現れ、恋慕のあまり亡夫の形見のまとい太鼓を打った生前を回想し、僧が懺悔の舞を勧めると、女は夜半楽の奏し越天楽今様を歌い、夜明けとともに消えた。

 

ワキ 夫佛法樣々なりと申せども、法華はこれ最第一

ツレ 三世の諸佛の出世の本懷、衆生成佛の直道なり

ワキ なかむづく女人成佛疑ひ有べからず。

ワキ・ワキヅレ 一者不得作梵天王、二者帝釈三者魔王、四者轉輪聖王、五者佛身云何女身。

同 速得成佛、なに疑ひかありそ海の、深き執心を、晴らして浮かび給へや。

同 或は若有聞法者、或は若有聞法者、無一不成佛と説き、一度、此經を聞人、成佛せずといふ事なし、唯頼め頼もしや、弔ふ、燈の影よりも、化したる人の來りたり、夢か現か、見たり共なき姿かな。

 


※唯頼め
巻第十三 恋歌三 1223 前大僧正慈圓
攝政太政大臣家百首歌合に契戀のこころを
ただ頼めたとへば人のいつはりを重ねてこそは又も恨みめ

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