新古今和歌集の部屋

謡曲 富士太鼓

富 士 太 鼓

                   四番目物・狂女物 作者不明20-5

住吉社の楽人富士は、宮中の管弦の催しがあるので、太鼓の役を志願して京に上ったが、富士の妻が不吉な夢を見たため娘と共に上京し、夫の死を知る。天王寺の楽人浅間が押しかけた富士を恨み殺した。形見の鳥甲と舞衣を受け取り、引き止めるべきだったと悔やむ。やがて形見の衣を身に付け、狂乱の状態で、夫の敵と太鼓を娘と共に打つ。いつしか富士の霊が妻に憑依し、舞楽を舞う。夫の霊が去った後、夫を偲びつつ住吉へ帰っていく。

 

二人 雲の上なを遥かなる、雲の上なを遥かなる、富士の行ゑを尋ねむ。

女 是は津の國住吉の楽人、富士と申人の妻や子にて候、扨も内裏ん七日の管弦のましますにより、天王寺より楽人召され參るよしを聞、わらはが夫も太鼓の役

二人 世に隠れなければ、望み申さむ其爲に、都へ上りし夜の間の夢、心にかかる月の雨。

二人 身を知る袖の涙かと、明かしかねたる終夜。

二人 寝られぬままに思ひ立つ、寝られぬままに思ひ立つ、雲井やそなた故郷は、あとなれや住吉の、松の隙より詠むれば、月落かかる山城も、はや近づけば笠を脱ぎ、八幡に祈り掛帯の、結ぶ契りの夢ならで、現に逢ふや男山、都に早く着にけり、都に早く着にけり。


 


※身を知る袖の涙
第十四 恋歌四 1271 太上天皇
百首歌中に
忘らるる身を知る袖のむら雨につれなく山の月は出でけり


地 實や女人の惡心は、煩悩の雲晴れて、五常樂を打ち給へ

女 修羅の太鼓は打ち止みぬ、此君の御命、千秋樂と打たふよ

地 扨又千代や万代と、民も榮へて安穏に

女 太平樂を打たふよ

同 日もすでに傾きぬ、日もすでに傾きぬ、山の端を眺めやりて、招き返す舞の手の、嬉しや今こそは、思ふ敵は討たれ、討たれて音をや出すらん。我には晴るる胸の煙、富士が恨みを晴らせば、涙こそ上なかりけれ。


※晴るる胸の煙、富士が恨み
第十二 恋歌二 1132 藤原家隆朝臣
攝政太政大臣家百首歌合に
富士の嶺の煙もなほぞ立ちのぼるうへなきものはおもひなりけり

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