(月の巻)
祖父祭守大中臣
伊勢大輔 能宣朝臣父祭主
輔親朝臣高階
古のなら 成順ノ妻
の
都の
八重桜
けふ
九重に
にほひぬる哉
(花の巻)
伊勢大輔
いにしへの
ならの都の
八重ざくら
けふ九重に
にほひ
ぬるかな
詞花集春
一条院の御時ならのやへ
ざくらを人のたてま
つりけるを御前にはべ
りければそのはなを
だいにてうたよめとお
ほせごとありければ
とあり。
○うたのこゝろははやくふる
さとゝなりたるならの都
の八重桜のけふさらに
此九重の天子のおまへ
に出てもてはやさるゝこと
よとさくらのときをえ
たるこゝろを即座によ
みいでたるなり。上のいにし
へといふにけふを對「して
いへるなり。ならの八重桜と
いひて一種ありし○たゝつ
ねの八重さくらにてもある
べし。
拾遺集に
折てみるかひもあり
けり山ざくら
けふこゝのへに
にほひまさりて
また後拾遺に
朝まだき
や重さく
きくの
みゆる ここのへに
は
霜の
おけばなりけり
※拾遺集に折てみる~
拾遺集 雑春
おなじ御時、梅の花のもとに御いした
てさせ給ひて、花宴させ給ふに、殿上
のをのこともうたつかうまつりけるに
源寛信朝臣
折りて見るかひもあるかな梅の花けふここのへのにほひまさりて
※また後拾遺に朝まだき~
後拾遺集 秋歌下
あさまだきやへさくきくのここのへにみゆるはしものおけばなりけり