をあらそひし人のすまひ日を
へつゝあれゆくいゑはこほたれてよ
とかはにうかひ地はめのまへにはたけ
となる。ひとのこゝろみなあらたま
りてたゝみなむまくらをのみ
おもくす。うしうくるまをようす
るものなし。西南海の領所をねか
ひて東きた國の荘薗をこのま
す。その時をのすからたよりあり
(軒)
を争ひし人の住まひ、日を経つゝ荒れゆく。
家は毀たれて淀川に浮かび、地は目の前に畠となる。
人の心皆改まりて、たゞ皆馬鞍をのみ重くす。
牛車を用する者無し。
西南海の領所を願ひて、東北國の荘薗を好まず。
その時、自ずから頼りあり
(参考)大福光寺本
ヲアラソヒシ人ノスマヒ日ヲヘツゝアレユク
家ハコホタレテ淀河ニウカヒ地ハメノマヘニ畠トナル
人ノ心ミナアラタマリテタゝ馬クラヲノミヲモクス
ウシクルマヲヨウスル人ナシ
西南海ノ領所ヲネカヒテ東北ノ荘薗ヲコノマス
ソノ時ヲノツカラ事ノタヨリアリ