かな傍注本新古今和歌集(後藤重郎本)
中納言家持
かさゝぎのはたせるはしにをく霜のしろきをみれば夜ぞ更けにける
かさゝぎの古事他に註す。霜天に満と云詩へよく叶也。かさゝぎの橋は久方の空のかへことば也。暁方に空を見れば、天にみちたる霜也。その白を見ればかねのおともなし。何と成覽。夜更ていみゆる也。かさゝのはしにおきたる霜を見て斗は、がてん不行、かへことば也。霜天にみつといふ同じ事也。忠岑、かさゝぎのわたせるはしの霜の上を夜半にふみ分こと更にこそ。和泉の大将時平公所々よる立よられければ、何方よりのかへりぞといわれければ、忠岑ずい身してよむ。