孤 鷺
金澤にて(1998~2001)
自閑は、李白の山中問答の
問余何意棲碧山 笑而不答心自閑
(あなたはどうしてこんな山奥に棲んでいるのですか?私は笑って答えず。心は自ずから安らかだ。)
より、俳句短歌を気ままに作って、心静かにしたいとの願いから、自分でつけました。
つたない自作の俳句、短歌、短編小説(31文字より多いものを書いてみたくなったことから書いた)です。
もしお時間がございましたら、お読み下さい。
悲しみを無きがごときに振るまえど
雁鳴く夕に涙零れる
珠洲の夏
ひとときのおだやかなりし珠洲の海
小さき浜に夏を楽しむ
終戦記念日
暑き夏サイレンの音鳴り響き
孤島の石となりし人想う
日ノ本に捧げし人の孫たちを驚き嘆き悲しむやらむ
ある方の少女の頃の想い出を聞き
波の間に想ひし人の名前書き消えず残れと願いはずかし
やさやさとかけ声勇ましキリコゆれ
怖さまぶしさ混じりて見ゆる
異国より渡りし船のかすか見え
遠きところの話聞きたし
覆 水
広き世を飛び出るこまどりの籠懐かしめど主なき宿
広き世を飛び出るこまどりの懐かしき籠帰るすべ無し
誰一人愛せぬ我が身のかなしさや
人なき部屋の明かりをともす
宗姉妹
古き世の三姉妹の本読み終える紅き太陽彼の地に帰す
孤鷺
風雪の激しき池の辺にて一羽の鷺は一歩踏み出す
ある課長より依頼され
印章の経りし影見て酔いどれの犀川の松遠く憶える
秋祭り
音もなく過ごしき家の今日だけは子らの笑ひと祭囃子と
広々と過ごしき家の縁側も子らの笑ひに満る祭り日
お囃子のあとをとぼとぼ追ひし日が
今日は我が子が追ふを見守る
なやみ
美しき夕焼け広く染まれどもおもふは多く心騒がず
捨て猫
人の世に玩ばれし捨て猫の車輪の下に何を恨むや
うらみ
恨みなど心に棲みし鬼なれど自ら産みし我と思えば
哀しきたんぼぽ スナックのママの見た風景より
風に乗り色無き路に根を下ろし一人咲くや冬の蒲公英
風に乗り色無き路に根を下ろし密かに咲くや蒲公英の花
電 飾
電球を茂れる木々に飾られて早く枯れろといわんばかりに
電飾の荊の衣着らされて哀れなるかな冬の並木
電飾の荊の衣着らされて罪なき故に哀れなるかな
スナックにて
名も知らぬ人と歌ひし時ぞたのし小さき店に笑いあふるる
遅延バス
遅々として進まぬバスの中にをり一間進みて喜びおぼゆる
美しき花の盛りの時よりも命終えんとする紅葉かな
絶え間なく降り注ぐ雪眺めつつ故郷の春はなほ遠くみゆ
女流歌人
歌人の想ひはとげず春の名の小浜の海は今も変わらず
礼状に添える歌を依頼され
懐かしき歌流れては口ずさむ乙女の心もどりて楽し
恋 慕
名も知らぬ人にあこがれ行くバスのまぶしきゆえに声もかけれず
能登鉄道廃止予定路線
友二人冬の能登路の終える汽車くつろぎの中盃交わす
花の宴 良寛短歌を借りて
君に逢ひ花見ることの嬉しさもひとめ見しこそ夢かとぞ想ふ
桜見る嬉しさよりも君に逢ひひとめ見しこそ夢かとぞ想ふ
秋の並木道
君がため去りし秋の葉また踏みて残る言の葉心きざみつ
恋 歌 集
昔読む歌集をひろげ懐かしむはさみししおりに書きし恋歌
昔読む恋歌ひろげ懐かしむしおりに書きし想ひ変わらず