かさねてわかるゝりひやうじに おうせうれい
重別李評事 王昌齢
なかれいふをしうこうりへつかたしとしうせんめいしつこれちやうあんごきくはんふしてとめて
莫道秋江離別難舟舩明日是長安呉姫緩舞留
きみをゑはむすいいなれせいふうはくろのかん
君醉隨意青楓白露寒 たひたちかのびてるゆへ二ども三どもわかるゝを
てうべつといふなり
まいかたからわかれをいゝいたしてこのころまては秋口の風はを見あわせていたからきうにはわかれはせまいとゆにたを
たのみにしていたがもに明るはわかれねばならぬ。いふ事なかれなせなれは明日は舟にのり長あんへゆかるゝ。こよひ
はせめての事にゆくりとぎじよにまいなどをまわせて酒もりをするじや。たのしんで下されよ。このりへつ
の川はたの青楓の木かけの寒くともずいいにまゝよやれとおもひなこりをおしみ酒もりをする事じや
重ねて李評事に別る
王昌齢
道(い)ふ莫かれ、秋江別難難しと。
舟船明日是れ長安。
呉姫緩舞(かんぶ)して君を留めて酔はしむ。
隨意なり、青楓白露の寒。
意訳
言わんでくれ、秋の揚子江は、名残り惜しく去りがたいと。
まあ、明日の出立など心配せず、今日はゆっくりとしてくれ。明日船に乗りさえすれば、長安に着いたと同じ事。
呉の舞姫がゆったりとした踊りで君を留めて、酔わせてくれるだろう。
(新暦の9月の上旬の)未だ青い楓に付く露が、肌寒く感じようとも、構わんでは無いか。
※重ねて 以前送別会をしたが、又送別会を開いた時と考えられているが、不詳。王昌齢が江寧(現在の南京市)の丞をしていた時の作と思われる。
※李評事 不詳。評事は、刑事犯罪裁判の事務官の官名。
※呉姫 呉地方の舞姫。
※白露の寒 初秋の寒さ。
汾酒
唐詩選畫本 七言絶句 巻三