新古今和歌集の部屋

田兒之浦從考 富士山はどこから見えるか

 
1 はじめに
田子の浦にうち出でて見れば白たへの富士の高嶺に雪は降りつつ
 
これは、新古今和歌集巻第六 冬歌 題しらずの山部赤人の和歌で、百人一首でも有名である。撰歌材料としたのは、万葉集巻第三318 雑歌 山部宿祢赤人望不尽山作歌一首并短歌
田児之浦従 打出而見者 真白衣 不尽能高嶺尓 雪波零家留
による。
田子の浦は、現在知られている静岡県富士市の田子の浦港ではなく、もっと西の静岡市清水区蒲原付近と言われている。
しかし、当然田子の浦から富士山が見えなければ、ならない。
そこで、過去の万葉集、百人一首において、どの樣な説が唱えられたのかを検証すると共に、実際に蒲原を歩き、見える地点を探して、山部赤人が見た位置を考察してみたいと思う。
 
 
 
 
 
 
5 富士山はどこから見えるか
静岡市清水区蒲原から富士を見ようとしてもほとんど見られない。それは、海岸から2.8kmのところに大丸山(標高567.1m)、3.7kmのところに金丸山(標高592.2m)mがそびえ立ち、富士山への視界を遮っている。
そこで、JR蒲原駅から富士川への街道を、それぞれの個所の視点から見てみると
 
(1)蒲原中
蒲原には、国道1号線が走り、海岸沿には、高架された富士由比バイパスが通っている。富士川からの土砂が堆積する前は、もっと海岸は陸地にあったと見て良い。
蒲原中(北緯35.113219,東経138.588732)から見てみると(写真5ー1)辛うじて富士山の頭が見える程度であり、富士山が見えたと言うより、山頂の雪により確認出来たと言う程度。
とても歌の様な雄大な富士を歌うには、相応しいとは思ない。
 
 
(2)蒲原小金
蒲原の海岸を更に東に行くと富士山と確認出来る場所(北緯35.113748,東経138.593024)に着いたので、高架の下の少し高い地点写真(5−2)を撮る。
上部は良く見えるが、辛うじてと言う程度であり、盛り土をした海抜6mの地点なので見えると考えてよく、ここより北の国道1号、旧東海道からはまず見えない。
 
 
(3)蒲原1丁目
中学校を過ぎ、国道1号線の橋に向かう道路と別れて、県道396号を直進し、蒲原1丁目2付近(北緯35.128663,東経138.618747)よりやっと富士山の全貌が見えてくる。(写真5−3)
やはり、ここより東でないと、長歌の「天地の 別れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 富士の高嶺を」と言う神々しい富士山と言う感じを受けない。



(4)富士川駅
富士市中之郷のJR富士川駅前の歩道橋から富士を見ると(写真5−4)、まさに「天の原 振り放け見れば」と赤人が見た風景。ただし、当時は噴煙を上げていたので、轟く爆音に更に神々しく感じたと思われる。



(5)結論
以上の点を地図にまとめると、以下の通りとなる。
(富士眺望地図 国土地理院地図より作成)
黒線と青線の方向には、富士山がある。西上部の2点は、大丸山と金丸山を示す。
つまり、田子の浦は、富士川付近でないと雄大な富士山は見えない。
 

コメント一覧

jikan314
Shanxi様
コメント嬉しいです。
実は、2~4まで基礎資料を収集中なので、未執筆なんです。
何年も放置すると写真の保存場所も忘れそうなので、取り敢えず重要な写真部分をアップしました。
万葉学者が、ここが田子の浦としたので、その反論です。見えないと言うのは、大きな証拠です。
天気もここ2~3日晴天が続き、嬉しいですが、風邪も引きやすくなっています。十分ご注意下さい。
拙句
時知らぬ富士は秋には近く見え
3948Thankyoufoureight
山部赤人、『田子の浦』ですね。

これは覚えていましたよ。
🤣☺️

ありがとうございます。

( v^-゜)♪🌹
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