なかにさしもあやうき世中の
家をつくるとてたからをついや
すことはすくれてあちきなくそ
侍る。又治承四年卯月のころ、中御門
京極のほとよりおほきなるつ
しかせおこりて六条わたりま
ていかめしくふく事侍き三四
丁をかけてふきあくるあひた
にその中にこもれる家ともおほ
(人の営み皆愚かなる)
中に、さしも危うき世中の家を造るとて、宝を費やす事は、すぐれてあぢきなくぞ侍る。
又治承四年卯月の比、中御門京極のほどより、大きなる辻風起こりて、六条辺りまで、厳めしく吹く事侍き。
三四丁を掛けて吹きあぐる間に、その中に籠もれる家ども、大
(参考)大福光寺本
ナカニサシモアヤウキ京中ノ家ヲツクルトテタカラヲツイヤシコゝロヲナヤマス事ハスクレテアチキナクソ侍ル
又治承四年卯月ノコロ中御門京極ノホトヨリヲホキナルツシ風ヲコリテ六条ワタリマテフケル事ハヘリキ
三四町ヲフキマクルアヒタニコモレル家トモヲホキ