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新古今和歌集の部屋

式子内親王 三百六十番歌合

三百六十番歌合

393 梅の花香をのみ送る春の夜は心幾重の霞涌くらむ
むめのはなかをのみをくるはるのよはこころいくへのかすみわくらむ

394 我が宿は立ち枝の梅の咲きしより誰とも無しに人ぞ待たるる
わかやとはたちえのむめのさきしよりたれともなしにひとそまたるる

395 春雨は降るともなくて青柳の糸に貫く玉ぞ数添ふ
はるさめはふるともなくてあおやきのいとにつらぬくたまそかすそふ

396 花故に今日ぞ踏み見ることしあれば心に鳴らすみ吉野の山
はなゆゑにけふそふみみることしあれはこころにならすみよしののやま

397 何となく心細きは山の端に横雲渡る春の曙
なにとなくこころほそきはやまのはによこくもわたるはるのあけほの

398 待ち待ちて聞くかとすれば郭公声も姿も雲に消えぬる
まちまちてきくかとすれはほとときすこゑもすかたもくもにきえぬる

399 蝉の声未だ夏深きみ山辺に秋を込めたる松風ぞ吹く
せみのこゑまたなつふかきみやまへにあきをこめたるまつかせそふく

400 御禊して川辺涼しき浪の上にやがて秋立つ心こそすれ
みそきしてかわへすすしきなみのうえにやかてあきたつこころこそすれ

401 夕間暮そこはかとなき空に只哀れを秋の見せけるものを
ゆふまくれそこはかとなきそらにたたあはれをあきのみせけるものを

402 長らへば如何はすべき秋を経て哀れを添ふる月の影かな
なからへはいかかはすへきあきをへてあはれをそふるつきのかけかな

403 眺めても思へば悲し秋の月何れの年の夜半までか見む
なかめてもおもへはかなしあきのつきいすれのとしのよはまてかみむ

404 うら枯るる庭の浅茅にかつ積もる木の葉かき分け誰か訪ふべき
うらかるるにはのあさちにかつつもるこのはかきわけたれかとふへき

405 難波潟葦辺をさして漕ぎ行けばうら悲しかる鶴の一声
なにはかたあしへをさしてこきゆけはうらかなしかるつるのひとこゑ

406 引き結ぶ草の鎖しの儚きに心して吹け木枯らしの風
ひきむすふくさのとさしのはかなきにこころしてふけこからしのかせ

407 古里の真木の板屋に降る霰音づるるしも寂しかりけり
ふるさとのまきのいたやにふるあられおとつるるしもさひしかりけり

408 遠ざかる都の空を眺むれば袂に他所の月ぞ宿れる
とほさかるみやこのそらをなかむれはたもとによそのつきそやとれる

(終了)

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