これらを思ひがけず前齋院の御そに、人の伝へ御覧ぜさせければ
382 時の間の夢幻になりにけむ久しくなれし契りと思へど
ときのまのゆめまほろしになりにけむひさしくなれしちぎりとおもへと
383 限りなく深き別れの悲しさは思ふ袂も色変はりけり
かきりなくふかきわかえのかなしさはおもふたもともいろかはりけり
384 今は只寝られぬいをや歎くらむ夢路ばかりに君をたどりて
いまはたたぬられぬいをやなけくらむゆめちはかりにきみをたとりて
385 雲の果て波間を分けて幻も伝ふばかりの歎きなるらむ
くものはてなみまをわけてまほろしもつたふはかりのなけきなるらむ
386 秋来ぬと荻の葉風に知られても春の別れや驚かるらむ
あききぬとおぎのはかせにしられてもはるのわかれやおとろかるらむ
387 歎きつつそれと行方を分かぬだに悲しきものを夕暮の雲
なけきつつそれとゆくへをかかぬたにかなしきものをゆふくれのくも
388 幾年も別れの床に起き臥して同じ蓮の露を待ち見よ
いくとしもわかれのとこにおきふしておなしはちすのつゆをまちみよ
389 面影に聞くも悲しき草の原分けぬ袖さへ露ぞ零るる
おもかけにきくもかなしきくさのはらわけぬそでさへつゆそこほるる
390 物言はぬ別れのいとど悲しさは映す姿も甲斐ぞなかりし
ものいはぬわかれのいととかなしさはうつすすがたもかひそなかりし
391 道変はる別れはさても慰まじ珠の行方をそこと告ぐとも
みちかはるわかれはさてもなくさまじたまのゆくへをそことつくとも
392 身に滲みて音に聞くだに露けきは別れの庭を払ふ秋風
みにしみておとにきくたにつゆけきはわかれのにはをはらふあきかせ
御返しに 俊成
色深き言の葉贈る秋風に蓬の庭の露ぞ散り添ふ
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