222 桜色の衣にも又別かるるに春を残せる宿の藤波 風雅集
さくらいろのころもにもまたわかるるにはるをのこせるやとのふちなみ
本にも又→C本 わかる→C本 わかただに→神宮本 春を残れる→益田本 宿の藤かな→B本・正治百首
223 待つ里を分きてや漏らす郭公卯の花蔭の忍び音の声
まつさとをわきてやもらすほとときすうのはなかけのしのひねのこゑ
待つ里に→C本 わきはやもらす→河野本 卯の花風の→岩崎本 忍び音の色→神宮本 待つことを分かでや漏らす→夫木抄
224 郭公鳴きつる雲を形見にてやがて眺むる有明の空 玉葉集
ほとときすなきつるくもをかたみにてやかてなかむるありあけのそら
啼へる雲を→C本 聞きつる雲を→国会本・河野本
225 声はして雲路に噎ぶ郭公涙や注ぐ宵の村雨 新古今
こゑはしてくもちにむせふほとときすなみたやそそくよひのむらさめ
雲路に向かふ→A本・松平本 涙やそて→森本 宵の急雨→三手本 本歌:声はして涙は見えぬ郭公我が衣手のひつをからなむ(古今集 読み人知らず)
226 郭公横雲霞む山の端の有明の月に猶ぞ語らふ 風雅集
ほとときすよこくもかすむやまのはのありあけのつきになほそかたらふ
横雲霞みむ→森本
227 水暗き岩間に迷ふ夏虫の灯し消ちても夜を明かすかな 新後拾遺
みつくらきいはまにまよふなつむしのともしけちてもよをあかすかな
岩間に向かふ→松平本 岩間に紛ふ→国会本・河野本・正治百首・夫木抄 ともしそちても→A本 ともしけちくも→神宮本 夜を明かすなる→B本
228 五月雨の雲は一つに閉ぢ果てて貫き乱れたる軒の玉水
さみたれのくもはひとつにとちはててぬきみたれたるのきのたまみつ
ともはふとへに→C本 ぬき乱れ散る→国会本・河野本 ぬき乱れつる→正治百首 水の玉水→C本
229 古を花橘に任すれば軒の忍に風通ふなり
いにしへをはなたちはなにまかすれはのきのしのふにかせかよふなり
恵橘に→国会本
230 帰り来ぬ昔を今と思ひ寝の夢の枕に匂ふ橘 新古今
かへりこぬむかしをいまとおもひねのゆめのまくらににほふたちはな
帰りこむ→益田本 昔を今に→C本・森本 昔を今も→文化九本 通ふ立花→B本
本歌:いにしへの賤の苧環繰り返し昔を今になすよしもがな(伊勢物語 三十二段)
231 真葛原浦風馴るる夏の夜は秋立ち初むる蝉の羽衣
まくすはらうらかせなるるなつのよはあきたちそむるせみのはころも
232 涼しやと風の便りを尋ぬれば繁みに靡く野辺の小百合葉 風雅集
すすしやとかせのたよりをたつぬれはしけみになひくのへのさゆりは
すしやと→松平本 茂みに靡く→B本・国会本・河野本・正治百首・風雅集 野辺のさゆるは→A本
本歌:夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ(万葉集 大伴坂上郎女 続後拾遺集)
233 小夜更けて岩漏る水の音聞けば涼しくなりぬ転た寝の床 玉葉集
さよふけていはもるみつのおときけはすすしくなりぬうたたねのとこ
小夜深み→B本・京大本・森本・国会本・A本・松平本・神宮本・文化九本・河野本・正治百首 山漏る水の→三手本 音冴えて→A本・B本・松平本・正治百首 音済みて→C本・神宮本 驚けば→国会本 転た寝の夢→C本・国会本
234 池寒き蓮の浮き葉に露は居ぬ野辺に色なる玉や敷くらむ
いけさむきはすのうきはにつゆはゐぬのへにいろなるたまやしくらむ
池寒み→益田本 蓮の薄葉に→松平本 野辺の色なる→C本・京大本・神宮本 露やしくらん→B本 玉や散るらん→岩崎本・三手本・文化九本 花や敷くらむ→春海本
本説:池冷水無三伏夏 松高風有一声秋(和漢朗詠集 源英明)
235 月の色も秋近しとや小夜更けて籬の荻の驚かすらむ 玉葉集
つきのいろもあきちかしとやさよふけてまかきのをきのおとろかすらむ
月も色も→春海本 笆の萩のB本・C本・神宮本・森本
本歌?:秋は来ぬ年も半ばに過ぎぬとや荻吹く風の驚かすらん(千載集 寂然)
236 秋風と仮にや告ぐる夕暮の雲近きまで行く蛍かな 風雅集
あきかせとかりにやつくるゆふくれのくもちかきまてゆくほたるかな
秋風も→国会本・河野本 雲井を近く→C本 雲路かきまで→国会本
本歌:行く蛍雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ(伊勢物語 四十五段 後撰集 業平)
参考
式子内親王集全釈 私家集全釈叢書 奥野 陽子 著 風間書房
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