源氏物語湖月抄 北村季吟
花宴
源
ふかき夜の哀をしるも入る月の
おぼろげならぬ契とぞ思ふ
ふかき夜の 細 かやうに思ひかけ
ざるは、おぼろげならぬ契にては
なきかと。孟 まへに女てりも
せずの歌を吟ずるは月の哀をしる
也。上句は其心也。下の句入方の
折節、月もさやかなるを、契のお
ぼろげならぬといへるにや。師 此
夜のさまをしる心はたがひに深き
契ぞとのよし也。
細 細流抄 西三條ノ右大臣公條
孟 孟津抄 九條ノ禪閣植通
師 或は師説 湖月抄ノ師説 箕形如庵ノ説
講談社学術文庫
有川武彦 校訂
昭和57年5月10日
講談社