さる5月9日、「また1週間以上、記録が滞ってしまいました」のブログ欄で、サンケイスポーツ紙に毎週水曜日掲載されている連載コラム「考える脚」のことを取り上げた。
作家の星野智幸さんによるものだ。5月9日に連載29回目にして初めて気づき、その後もご無沙汰だったが、6月6日付けスポーツ紙は「香川、マンU決定」の報が流れた翌朝だけにサンケイスポーツも1面に持ってきた関係で入手した。
連載コラムは第33回目になっており、テーマは「ゲームとメディアの軋轢」。ゲームというのは任天堂やプレステなどのゲームのことではなく、生のサッカーゲームのことのようだ。
コラムの要旨は、サンケイスポーツがつけたコラムの見出しに凝縮されていた。「試合の流れに関係なくメディアは物語を作りたがる」とある。W杯最終予選のオマーン戦を放送したNHK-BSの映像の作り方に違和感を感じたというのだ。小見出しに「控えの宮市をカメラが追う・・・中継に違和感」「サッカーを映さない」とある。
だいたいコラムの趣旨はおわかりいただけたと思うが、少し抜粋してみると、プレミアリーグのカメラワークの良さと比較して「日本の中継では、ひどい場合は、プレーの最中に選手の顔のアップを写したりする。サッカーなど映したくないのだろう」とか、「オマーン戦のNHKの中継では、サブリミナル効果であるかのように宮市の肖像が差し挟まれ、ゲームという物語なき物語をしばしば中断させていた。」
星野さんの観察によれば、そのように撮られる控え選手は宮市しかいないとのことで、「これはゲームの流れと関係なく、メディアが宮市の紋切り型なヒーロー誕生物語を欲望しているからだ」さらに「オマーン戦はスタメンがおおむね好調で結果も出ている。それなのに宮市の物語を必要とするのはサッカーファンではなく、自身の存在価値に不安を抱える既存のメディアだ。アイデンティティを失いかけて、宮市に依存しようとしているのだ」とバッサリだ。
星野さんは、この場合、NHKに限らずメディア全体がともすればヒーロー誕生を欲しがちで、それは自らのアイデンティティに不安を抱いているためだ、という観点でコラムをまとめられているが、当ブログはもっと容赦なく、要はNHKは民放以上にえげつない、と考えている。
当ブログが、このコラムをまとめるとすると、なんのことはない「NHK-BSがプレミアリーグを放映しており、いまのところ日本人選手が宮市だけであり、その宮市が日本代表としてベンチで出番を待っています」と言わんがために、そういうバカな映像を作っている。
これで香川真司がプレミアに移って、引き続きNHKが放映することになったら大変だ。まるで自局にスタータレントを抱えたような扱いになることは目に見えている。それでサッカーの露出が増えるならいいでしょう、と思うのは早計で、NHKというのは、いろんな、えげつないことをやるテレビ局だ。こんな巨大メディアにケチをつけると、当ブログなど、人間の手に捕まえられた小さな蚊のように、あっという間にひねりつぶされて抹殺されてしまうかも知れないが、そう言いたくなるほどのヤリ口が見られる。
具体的な例が、NHK総合の「ニュースウォッチ9」だ。この番組の大越キャスター、ご存じの方も多いと思うが、元東京六大学のエースピッチャーだ。NHKの看板キャスターだ、もちろん出身は東大だ。
したがって、ご本人が野球に入れ込むのは想像できるし、ある程度は仕方がないと思う。大越キャスターは人柄も温厚そうで、語り口もいいからこの番組としては起用大成功という感じだが、こと野球の扱いに関しては少々度が過ぎている。なにしろ、スポーツコーナーで扱うのは大半が野球であり、プロ野球の1試合1試合を懇切丁寧に放映している。
プロ野球は毎日毎日試合が行われ、他のスポーツはほとんどが土日。だから仕方がないという理屈で説明するかも知れないが、昨今テレビを見ている人の中で、昔みたいに選択肢が野球か相撲ぐらいしかなかった時代とは違い、野球のニュースを待ち望んでいる人はずいぶん少ないのではないか。
もちろん、野球大好きの人たちが、この「ニュース9」の取り上げ方を嬉しく思っているだろうことも否定しないが、どちらかというと、プロ野球を詳しく放送しているのは、キャスターの大越さんを喜ばせようとしているからだと、ひねくれて考えざるを得ないほど、えげつない。
星野智幸さんのコラムから、当ブログが勝手に「NHK、やることがえげつないぞぉ」という話に持っていっているが、星野さんの論旨は、そうではないのかも知れないので、読者の皆さんはくれぐれも、その辺を分けて解釈して欲しい。