2011/7/31毎日新聞で伝えておりました。途中からです。
-フィンランドに建設中の最終処分場-
「使用済み核燃料は10万~20万年の間、安全に管理する必要がある」。フィンランドで建設中の最終処分場「オンカロ」。施設を運営するポシバ社の技術者、ピアタリさんが語り始めた。
2020年に稼働が始まるオンカロは、3キロ四方のオルキルオト島の中央部にある。島には原発2基があり、さらに2基を増設する。使用済み核燃料の中間貯蔵施設、原発運転中や解体後に出る中・低レベル放射性廃棄物の地下処分施設もある“核の要塞(ようさい)”だ。
「原発で使った核燃料は、半減期2万4000年のプルトニウムなど大量の放射性物質の塊。自然界に存在する放射線レベルに低減するには、気の遠くなるような期間、安全に管理する必要がある。10万年なら1021世紀までだ」。ピアタリさんの説明は進む。
保管は、円柱状の銅製キャニスター(直径約1メートル、長さ4・8メートル、厚さ5センチ)に使用済み燃料を詰め込み、地下430メートルに掘った横穴に5メートル間隔で縦穴を掘り、そこに筒を1本ずつ処分する。最大1万2000トンの処分が終わる2120年に地下の施設全体をコンクリートで密封する。
アールト大工学部のルンド教授(原子物理学)は「安全のため地下1000メートルまで掘るべきだ」と語るが、規制当局の放射線・原子力安全局のイソランキラ上級検査官は「筒の腐食で放射性物質が漏れだしても、地表では国際基準をはるかに下回る」と言い切った。
同国の最終処分地選定は1980年代にさかのぼる。ポシバ社によると、当初は100カ所以上の候補地があったが、86年のチェルノブイリ原発事故で懸念が高まり、最終的には誘致に熱心だったオルキルオトが選ばれた。各国で最終処分場の建設が困難ななか、フィンランドで実現できた理由について、雇用経済省エネルギー局のフットネン次長は「初めから徹底的に情報公開し、国民的議論を深めた」と語り、手続きの透明性と民主的手法の重要性を説いた。
ただ、モンゴル構想とは異なり、他国のゴミは引き受けない。フットネン氏は「わが国は使用済み核燃料の輸出入を禁じている」と言った。
最大の焦点は、未来へどう警告するかだ。文明の後退や断絶もありうるから、施設の危険性を言語やマークで表示するのは確実とは言えない。フットネン氏は「モニュメントを造ると、人間は何かがあると掘り始めかねない。現場には何も残さない方が良い」と述べたが、10万年という未来を誰も想像できないでいるのだ。
◇各国で計画難航
最終処分場を巡っては、フィンランドとスウェーデン以外どの国も住民の反対で選定が難航している。日本では80年代に北海道幌延町、岩手県釜石市などでの計画が頓挫した。
各国とも代替案にしているのが一時(中間)貯蔵施設だ。原発内などにある核燃料を移送し、40年(ドイツ)~100年間(米国)貯蔵する計画だが、一時しのぎにすぎない。
安定した地層に処分場を造るのが最善との認識が一般化した70年代から90年代、豪州やパラオ諸島などに処分地を造り、各国の廃棄物を受け入れてもらう構想が生まれたが地元の反対で立ち消えた。原発反対派が原子力発電を「トイレのないマンション」と批判する理由がここにある。
今世紀に入って、国際原子力機関(IAEA)や米国が多国間管理の必要性を提唱し、モンゴル計画はこれに基づく。日本は、トルコなど新興国に輸出した原発で使用した核燃料の引き取り先としてモンゴルを活用したい考えだ。
◇モンゴル計画、否定後も極秘裏に
モンゴルでの最終処分場建設計画が毎日新聞報道で明らかになった後、モンゴル各紙は「チンギスハンの聖地を汚す」などと計画への批判を展開した。
モンゴル政府は対応に追われ、外務省のオンダラー原子力担当大使と国営原子力会社モンアトムのバダムダムディン会長が会見し、計画を否定。日米両政府とも、計画を進めていないとの見解を示し、火消しを図った。
その一方で、モンゴルのエルベグドルジ大統領は6月16日に訪米し、オバマ米大統領と核開発計画推進での協力で合意した。
東芝も佐々木則夫社長が報道直後に米エネルギー省のポネマン副長官に書簡を送り、計画の推進を促した。ポネマン氏は了解覚書(MOU)の作成に着手し、福島第1原発事故の状況を説明するため6月10日に訪米した細野豪志首相補佐官(当時)と会談。日米モンゴル3カ国に、アラブ首長国連邦を加えた4カ国で「計画を進めたい」と説明した。
毎日新聞が入手した「包括的核燃料供給(CFS)に関する4カ国了解覚書」には、核燃料供給、ウラン転換、濃縮、使用済み核燃料一時貯蔵、最終処分などの事業の全体が記される。核不拡散上の懸念がある、モンゴルでのウラン濃縮事業を「認める」とも解釈できる表現を盛り込むなど、モンゴル側の歓心を買う内容でもあった。
福島第1原発事故を契機に、世界で原発の安全性向上が議論されている。それは今後も人類が原子力に頼っていくことが前提だ。しかし、避けて通れない核のゴミ問題の議論は低調なまま。しかも、モンゴル計画は、関係各国が「否定」して秘密裏に進めていることで、議論さえ事実上封じられている。【オルキルオト(フィンランド南西部)会川晴之】
-引用終わり-
-フィンランドに建設中の最終処分場-
「使用済み核燃料は10万~20万年の間、安全に管理する必要がある」。フィンランドで建設中の最終処分場「オンカロ」。施設を運営するポシバ社の技術者、ピアタリさんが語り始めた。
2020年に稼働が始まるオンカロは、3キロ四方のオルキルオト島の中央部にある。島には原発2基があり、さらに2基を増設する。使用済み核燃料の中間貯蔵施設、原発運転中や解体後に出る中・低レベル放射性廃棄物の地下処分施設もある“核の要塞(ようさい)”だ。
「原発で使った核燃料は、半減期2万4000年のプルトニウムなど大量の放射性物質の塊。自然界に存在する放射線レベルに低減するには、気の遠くなるような期間、安全に管理する必要がある。10万年なら1021世紀までだ」。ピアタリさんの説明は進む。
保管は、円柱状の銅製キャニスター(直径約1メートル、長さ4・8メートル、厚さ5センチ)に使用済み燃料を詰め込み、地下430メートルに掘った横穴に5メートル間隔で縦穴を掘り、そこに筒を1本ずつ処分する。最大1万2000トンの処分が終わる2120年に地下の施設全体をコンクリートで密封する。
アールト大工学部のルンド教授(原子物理学)は「安全のため地下1000メートルまで掘るべきだ」と語るが、規制当局の放射線・原子力安全局のイソランキラ上級検査官は「筒の腐食で放射性物質が漏れだしても、地表では国際基準をはるかに下回る」と言い切った。
同国の最終処分地選定は1980年代にさかのぼる。ポシバ社によると、当初は100カ所以上の候補地があったが、86年のチェルノブイリ原発事故で懸念が高まり、最終的には誘致に熱心だったオルキルオトが選ばれた。各国で最終処分場の建設が困難ななか、フィンランドで実現できた理由について、雇用経済省エネルギー局のフットネン次長は「初めから徹底的に情報公開し、国民的議論を深めた」と語り、手続きの透明性と民主的手法の重要性を説いた。
ただ、モンゴル構想とは異なり、他国のゴミは引き受けない。フットネン氏は「わが国は使用済み核燃料の輸出入を禁じている」と言った。
最大の焦点は、未来へどう警告するかだ。文明の後退や断絶もありうるから、施設の危険性を言語やマークで表示するのは確実とは言えない。フットネン氏は「モニュメントを造ると、人間は何かがあると掘り始めかねない。現場には何も残さない方が良い」と述べたが、10万年という未来を誰も想像できないでいるのだ。
◇各国で計画難航
最終処分場を巡っては、フィンランドとスウェーデン以外どの国も住民の反対で選定が難航している。日本では80年代に北海道幌延町、岩手県釜石市などでの計画が頓挫した。
各国とも代替案にしているのが一時(中間)貯蔵施設だ。原発内などにある核燃料を移送し、40年(ドイツ)~100年間(米国)貯蔵する計画だが、一時しのぎにすぎない。
安定した地層に処分場を造るのが最善との認識が一般化した70年代から90年代、豪州やパラオ諸島などに処分地を造り、各国の廃棄物を受け入れてもらう構想が生まれたが地元の反対で立ち消えた。原発反対派が原子力発電を「トイレのないマンション」と批判する理由がここにある。
今世紀に入って、国際原子力機関(IAEA)や米国が多国間管理の必要性を提唱し、モンゴル計画はこれに基づく。日本は、トルコなど新興国に輸出した原発で使用した核燃料の引き取り先としてモンゴルを活用したい考えだ。
◇モンゴル計画、否定後も極秘裏に
モンゴルでの最終処分場建設計画が毎日新聞報道で明らかになった後、モンゴル各紙は「チンギスハンの聖地を汚す」などと計画への批判を展開した。
モンゴル政府は対応に追われ、外務省のオンダラー原子力担当大使と国営原子力会社モンアトムのバダムダムディン会長が会見し、計画を否定。日米両政府とも、計画を進めていないとの見解を示し、火消しを図った。
その一方で、モンゴルのエルベグドルジ大統領は6月16日に訪米し、オバマ米大統領と核開発計画推進での協力で合意した。
東芝も佐々木則夫社長が報道直後に米エネルギー省のポネマン副長官に書簡を送り、計画の推進を促した。ポネマン氏は了解覚書(MOU)の作成に着手し、福島第1原発事故の状況を説明するため6月10日に訪米した細野豪志首相補佐官(当時)と会談。日米モンゴル3カ国に、アラブ首長国連邦を加えた4カ国で「計画を進めたい」と説明した。
毎日新聞が入手した「包括的核燃料供給(CFS)に関する4カ国了解覚書」には、核燃料供給、ウラン転換、濃縮、使用済み核燃料一時貯蔵、最終処分などの事業の全体が記される。核不拡散上の懸念がある、モンゴルでのウラン濃縮事業を「認める」とも解釈できる表現を盛り込むなど、モンゴル側の歓心を買う内容でもあった。
福島第1原発事故を契機に、世界で原発の安全性向上が議論されている。それは今後も人類が原子力に頼っていくことが前提だ。しかし、避けて通れない核のゴミ問題の議論は低調なまま。しかも、モンゴル計画は、関係各国が「否定」して秘密裏に進めていることで、議論さえ事実上封じられている。【オルキルオト(フィンランド南西部)会川晴之】
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