-森田芳光監督遺作は劇場をクスクス笑いに包む“鉄”ドラマ!-
2011年12月20日に急性肝不全のため、61歳にしてこの世を去った森田芳光監督。1981年に『の・ようなもの』で監督デビューして以来、『家族ゲーム』(1983年)、『失楽園』(1997年)、『武士の家計簿』(2010年)などの作品を世に送り出してきた同監督が、“鉄っちゃん““鉄子”などと呼ばれる鉄道ファンたちを主人公に作り上げたハートフルコメディーが、この『僕達急行 A列車で行こう』だ。
主演は『GANTZ』『マイ・バック・ページ』(共に2011年)などの映画に出演し、現在はNHK大河ドラマ『平清盛』でタイトルロールの清盛役を演じる松山ケンイチと、『ワイルド7』(2011年)主演の瑛太。イケメンな役が多い2人が、この映画では、仕事には前向きだが恋にはブキッチョな鉄道好きを好演。劇場にクスクス笑いを巻き起こしている。いったい、どんな映画なのか? まずは物語からお話ししよう。
-仕事に恋に悪戦苦闘しながら前向きに進む
主人公は、松山演じる大企業の「のぞみ地所」で働く小町圭と、瑛太演じる下町にある「コダマ鉄工所」の跡取り息子の小玉健太。“鉄道を愛する”という趣味を通じて知り合った2人は、すぐに意気投合。小町が今住んでいる部屋を出る必要に迫られたことから、コダマ鉄工所の寮に引っ越すことになり、毎晩のように小町の部屋で話し込むようになった2人はますます友情を育んでいく。
ある日、小町は九州支社への転勤を命じられる。地方への転勤を嫌がる社員も多いなか、ニッコリと笑顔を浮かべ「行ってみたかったんです」と2つ返事で引き受けた小町。彼を九州で待っていたのは、のぞみ地所がなかなか口説けない、地元の優良企業ソニックフーズとの業務提携を進める難事業だった。実はこの転勤は、彼の仕事ぶりを評価していたのぞみ地所の社長・北斗みのり(松坂慶子)直々の発令だったのだ。
一方、コダマ鉄工所では新しい設備投資のための融資を、小玉の父・哲夫(笹野高史)が銀行から断られ、行き詰まっていた。何とかしようと小玉も銀行を訪れるが、成果はなし。映画はそんな小町と小玉が、仕事に、そして恋に、悪戦苦闘しながらも前向きに進んでいく姿を描き出していく。
-仕事には「快速電車」並みでも恋は「鈍行電車」
見どころの1つが、小町役の松山と小玉役の瑛太が生み出す独特の間合い。真面目そうで言葉遣いも丁寧。鉄道ファンなことを除けば、どこにでもいそうな小町と小玉が交わす会話と距離感が独特の間を生み、普通のセリフや行動でさえも面白おかしく変化させ、クスクス笑いを誘うのだ。
また、互いに仕事には「快速電車」並みにガッツを見せるも、恋となると「鈍行電車」のように遅々として進まない2人の恋バナも、本作の重要ポイント。自分の世界に入り込むがあまり女の子に振られたり、女の子をリードできなかったりと、小町も小玉も女の子には大苦戦!
そんな女の子たちを演じた女優陣の演技も、この映画の見どころの1つ。貫地谷しほり、村川絵梨、松平千里といった若手女優が、小町と小玉に恋されたり恋したりする女性を好演。ちょっと変わったキャラを見せ、2人を翻弄するのだ。
-鉄道へのこだわりは登場人物の名前にも
もう1つのポイントが、日頃、あまり触れることのない“鉄道好き”の世界を垣間見られること。同じように鉄道好きでも、ある人は駅弁ファン、ある人は車体マニアと、人によって異なるそう。ちなみに、本作の小町は鉄道に乗り風景を見ながら音楽を聴くのが好きという設定で、小玉は鉄工所の跡取りらしく鉄道の鉄好きという変わり種だ。
そうした鉄道へのこだわりは、本作の登場人物の名前にも表れている。「小町=こまち(秋田新幹線)」「小玉=こだま(東海道・山陽新幹線の各駅電車)」をはじめ、あずさ(貫地谷しほりが演じる役名で中央本線の特急電車)、みどり(村川絵梨が演じる役名で博多・佐世保間を走る特急電車)、あやめ(松平千里が演じる役名で東京・佐原間を走る総武本線成田線の特急電車)など、主要登場人物の多くに、電車にちなんだ名前がつけられている。
-日本映画界は、大切な人材を失った
だが何と言っても、本作を笑って和める作品に仕立て上げたのは、森田監督の演出のなせるわざだろう。古くは『家族ゲーム』、最近では『間宮兄弟』(2006年)や『武士の家計簿』などコメディを得意としてきた監督らしく、“間“や“距離感”、“ちょっとだけ変なキャラ”や“運命のいたずら”といった要素を駆使し、劇中の至るところに笑いの要素を散りばめているのだ。
そこで起きる笑いは、シニカルさとは無縁の温かいもの。見終わったときに残ったのは、映画を存分に楽しんだという実感だった。改めて日本映画界は、大切な人材を失ったのだと、そう痛感させられた。
-引用終わり-
コメントを付けるのを忘れていました。「あらすじ ○○○」シリーズは下北にゆかりのある人物や物語です。
ま、松ケンでお分かりでしょうが・・・。
2011年12月20日に急性肝不全のため、61歳にしてこの世を去った森田芳光監督。1981年に『の・ようなもの』で監督デビューして以来、『家族ゲーム』(1983年)、『失楽園』(1997年)、『武士の家計簿』(2010年)などの作品を世に送り出してきた同監督が、“鉄っちゃん““鉄子”などと呼ばれる鉄道ファンたちを主人公に作り上げたハートフルコメディーが、この『僕達急行 A列車で行こう』だ。
主演は『GANTZ』『マイ・バック・ページ』(共に2011年)などの映画に出演し、現在はNHK大河ドラマ『平清盛』でタイトルロールの清盛役を演じる松山ケンイチと、『ワイルド7』(2011年)主演の瑛太。イケメンな役が多い2人が、この映画では、仕事には前向きだが恋にはブキッチョな鉄道好きを好演。劇場にクスクス笑いを巻き起こしている。いったい、どんな映画なのか? まずは物語からお話ししよう。
-仕事に恋に悪戦苦闘しながら前向きに進む
主人公は、松山演じる大企業の「のぞみ地所」で働く小町圭と、瑛太演じる下町にある「コダマ鉄工所」の跡取り息子の小玉健太。“鉄道を愛する”という趣味を通じて知り合った2人は、すぐに意気投合。小町が今住んでいる部屋を出る必要に迫られたことから、コダマ鉄工所の寮に引っ越すことになり、毎晩のように小町の部屋で話し込むようになった2人はますます友情を育んでいく。
ある日、小町は九州支社への転勤を命じられる。地方への転勤を嫌がる社員も多いなか、ニッコリと笑顔を浮かべ「行ってみたかったんです」と2つ返事で引き受けた小町。彼を九州で待っていたのは、のぞみ地所がなかなか口説けない、地元の優良企業ソニックフーズとの業務提携を進める難事業だった。実はこの転勤は、彼の仕事ぶりを評価していたのぞみ地所の社長・北斗みのり(松坂慶子)直々の発令だったのだ。
一方、コダマ鉄工所では新しい設備投資のための融資を、小玉の父・哲夫(笹野高史)が銀行から断られ、行き詰まっていた。何とかしようと小玉も銀行を訪れるが、成果はなし。映画はそんな小町と小玉が、仕事に、そして恋に、悪戦苦闘しながらも前向きに進んでいく姿を描き出していく。
-仕事には「快速電車」並みでも恋は「鈍行電車」
見どころの1つが、小町役の松山と小玉役の瑛太が生み出す独特の間合い。真面目そうで言葉遣いも丁寧。鉄道ファンなことを除けば、どこにでもいそうな小町と小玉が交わす会話と距離感が独特の間を生み、普通のセリフや行動でさえも面白おかしく変化させ、クスクス笑いを誘うのだ。
また、互いに仕事には「快速電車」並みにガッツを見せるも、恋となると「鈍行電車」のように遅々として進まない2人の恋バナも、本作の重要ポイント。自分の世界に入り込むがあまり女の子に振られたり、女の子をリードできなかったりと、小町も小玉も女の子には大苦戦!
そんな女の子たちを演じた女優陣の演技も、この映画の見どころの1つ。貫地谷しほり、村川絵梨、松平千里といった若手女優が、小町と小玉に恋されたり恋したりする女性を好演。ちょっと変わったキャラを見せ、2人を翻弄するのだ。
-鉄道へのこだわりは登場人物の名前にも
もう1つのポイントが、日頃、あまり触れることのない“鉄道好き”の世界を垣間見られること。同じように鉄道好きでも、ある人は駅弁ファン、ある人は車体マニアと、人によって異なるそう。ちなみに、本作の小町は鉄道に乗り風景を見ながら音楽を聴くのが好きという設定で、小玉は鉄工所の跡取りらしく鉄道の鉄好きという変わり種だ。
そうした鉄道へのこだわりは、本作の登場人物の名前にも表れている。「小町=こまち(秋田新幹線)」「小玉=こだま(東海道・山陽新幹線の各駅電車)」をはじめ、あずさ(貫地谷しほりが演じる役名で中央本線の特急電車)、みどり(村川絵梨が演じる役名で博多・佐世保間を走る特急電車)、あやめ(松平千里が演じる役名で東京・佐原間を走る総武本線成田線の特急電車)など、主要登場人物の多くに、電車にちなんだ名前がつけられている。
-日本映画界は、大切な人材を失った
だが何と言っても、本作を笑って和める作品に仕立て上げたのは、森田監督の演出のなせるわざだろう。古くは『家族ゲーム』、最近では『間宮兄弟』(2006年)や『武士の家計簿』などコメディを得意としてきた監督らしく、“間“や“距離感”、“ちょっとだけ変なキャラ”や“運命のいたずら”といった要素を駆使し、劇中の至るところに笑いの要素を散りばめているのだ。
そこで起きる笑いは、シニカルさとは無縁の温かいもの。見終わったときに残ったのは、映画を存分に楽しんだという実感だった。改めて日本映画界は、大切な人材を失ったのだと、そう痛感させられた。
-引用終わり-
コメントを付けるのを忘れていました。「あらすじ ○○○」シリーズは下北にゆかりのある人物や物語です。
ま、松ケンでお分かりでしょうが・・・。