家に昭和の初め頃からの，カビ臭い，古いアルバムがいくつかある。
その中の一つがこれだ。
（写真はクリックすると大きくなります）
私の祖母の弟，村松栞の，だいたいが昭和３年の１７歳の頃のアルバム
である。水泳部で活躍していたようだ。村松栞(しおり)という名前で，
友人も沢山いたようだ。
栞が17歳の時点では，その父は亡くなっている。その母(私の曾祖母)
は産婆をしていて，娘夫婦(私の祖父母)のいた岩手県に来て，その
仕事を続けていた。
その釜石に栞もいたのだろうか？ 釜石での写真はあるのだが，その
辺の状況がよく分からない。
これは，花巻温泉のスキー場で，友人と一緒の写真。みんな仇名で呼び
合っていたようだ。しかも，仇名がすぐ変わるみたいで，栞自信が自分
のことを，「ムツソリニ時代」とか「同志社」とか，「景色」とか，
アルバムの黒地に鉛筆や白インクで書いてある。
鉛筆の文字は保存はいいのだが，白インクは薄れて判読がしにくい。
この写真には，５０メートルの競泳の時の記録が書いてある。当時として
は早いのだろうか？
温水プールなどない頃のはずだが，季節は３月である。岩手の３月に屋外
で泳いでいたのだろうか？
これは，姉，その娘，栞が並んだ写真。「その娘」とは勿論私の母。
この私の母も，私たち３兄弟も，産婆をしていた曾祖母に取り上げて
もらっている。
このアルバムの中で，一番大きな写真がこの水着の女性である。栞と
どういう関係だか，まるで分からない。この年上の女性が好きだった
のか，水着姿の写真というだけで，ここに貼ったのか？
均整の取れたプロポーションである。大切な写真だったようだ。
そして，栞はこの後，歯学部に進学し，水泳も続け，オリンピックに
来年は出られるかもしれないという，２０歳の年で亡くなる。親知らず
の歯が腫れて，息がつまって，あっけなく死んでいる。
そして，１８歳から２０歳の時代のアルバムは，その母(私の曾祖母)が
親戚にあげてしまったので，写真はこの１７歳の時のものだけが残って
いる。死者のアルバムは，なんだか変に生々しくて，誰も見ていない
時は，まばたきをしたり，体の向きを変えていたりしていそうである。
