マスクのプレゼント。
以前なら気にもしなかったが,マスクがあるとそこに
目が行くようになってしまった。
ブルーベリーの畑のネットをちょっと持ち上げて撮影。
「今日は元気だ。明日は分からない」の毎日。
途方もなく天井の高い飼育器のなかに
君はいた。
飼育人は定刻にやってきて餌を与える。
ふりつもる「今」に嫌気がさし窓枠に手をあ
て切り取られた風景をながめる過去もあった
が 耳の奥に棲むひなたくさい声にもやがて
背を向け君はざらざらした床に踞った。
昏い排出。
深い悲鳴。
雌鳥が卵をあたためるように君は汚物を掌で
あたため
そして
どうしても
のめ、ない羽撃きのように
汚物を壁に擦りつけている。
飼育人が定時にやってきて掃除を始める。
床をブラシで擦ると水がはね
鋭い
空気がほぐれ
くりかえし、何かが崩れていく。
踵がない、ない踵をつけて歩くこころよさも
く(ずれていく。
ことばの届かぬ、反対側から君はそれを見て
いた。
くちびる。
君はそれを見ていた。
飼育人は定刻に解散した。
夜明けにも街は飼育器であふれ
おびただしい君はあふれ
汚物を洗う街はぬれ
咽喉のおくで
いっせいに
向きを
かえる
と
街は
ふいに君を吐きだした。
「孵化期はすでに
おわった
出ていき
そして話しかけなさい」
途方にくれ君は踵をくりだす。
途方もなく高い天井
ない踵をあなたの
ない踵へとのばすように
おびただしい君は前方の君を見ていた。
ひさしぶりに履いた靴
唇が開いた
もう眺めることもない、
唇が開いていた。
H10.3.19